保育士殺害事件の初公判が開廷、被告が殺人を認める
仙台地裁において、宮城県岩沼市の海岸で昨年4月に発生した保育士殺害事件の裁判員裁判の初公判が行われました。無職の佐藤蓮真被告(22)は、殺人や死体遺棄などの罪について起訴内容を大筋で認めましたが、窃盗罪については否認しました。
事件の概要と検察側の主張
起訴状によれば、被告は昨年4月12日夜、岩沼市下野郷の海岸防波堤上で、保育士の行仕由佳さん(当時35)の胸などをナイフで複数回突き刺し、失血死させたとされています。その後、遺体を砂浜の消波ブロックまで引きずって移動し、遺棄しました。さらに、行仕さんのバッグから現金約1144円やキャッシュカードが入った財布を盗んだとされています。
検察側の冒頭陳述では、被告がシングルマザーだった行仕さんとマッチングアプリで知り合い交際し、嘘をつくなどして100万円を超える借金を重ね、返済を先延ばしにしていたことが明らかになりました。昨年3月、行仕さんから妊娠と結婚の意思を告げられた後、被告はスマートフォンで「不起訴とは」「人を殺せる薬」「テトラポット落ちるとどうなる?」といった検索を行い、計画的な犯行の準備をしていたと指摘されています。
弁護側の反論と被告の行動
一方、弁護側は被告が行仕さんと交際している認識はなく、少なくとも86万円を借りていたことで関係を断ち切れなかったと主張しました。中絶を望んだが受け入れてもらえず、キックボクサーとして重要な試合を控えていたことも重なり、殺害に至ったと説明しています。証拠隠滅のために行仕さんのバッグや財布を奪ったものの、窃盗罪には該当しないと訴えました。
被告は犯行後、バッグや凶器を自宅近くの公園に投棄し、着衣などを山林に捨てていました。スマホには「捜査本部設置するとどうなる」「未解決になることは」「下野郷防犯カメラ」などの検索履歴が残されており、証拠隠滅を図っていた様子がうかがえます。
法廷で流れた悲痛なボイスメッセージ
公判では、当時8歳だった行仕さんの息子が、約束した時間に帰宅しない母親に宛てたボイスメッセージが再生されました。「ママ早く帰ってきて。怖い」という泣きじゃくる声に、傍聴席や遺族席からはすすり泣く音が聞こえ、法廷に重い沈黙が広がりました。
証人として出廷した行仕さんの母親は、妊娠などの事情を知らなかったと述べ、「1人で抱えて解決しようと思ったのかも。孫のたった1人の母親を奪い、家族や友人みんなの心を殺した犯人が憎い」と感情を露わにし、繰り返し厳罰を要望しました。
被告の様子と傍聴の状況
公判中、被告は手元の資料を食い入るように見つめ、熱心にメモを取る姿が見られました。息子の音声再生中や母親の証言の間はうつむき、ハンカチで目元や汗をぬぐう場面もありました。初公判の開始前には135人が傍聴を求めて並び、抽選が実施されるなど、事件への社会的関心の高さが示されました。
この事件は、マッチングアプリを通じた人間関係の複雑さや、金銭トラブルが悲劇を招くケースとして、社会に大きな衝撃を与えています。今後の公判では、被告の動機や背景がさらに詳しく審理される見込みです。



