保護司殺害事件で無期懲役判決 大津地裁が被告の完全責任能力を認定
大津市で発生した保護司殺害事件の裁判員裁判において、大津地裁は2日、殺人罪などに問われた無職の飯塚紘平被告(36歳)に対し、求刑通り無期懲役の判決を言い渡しました。谷口真紀裁判長は被告の完全責任能力を明確に認め、「生命軽視の姿勢は顕著で、悪質性は無差別殺人と遜色がない」と厳しく指摘しました。
事件の概要と犯行の詳細
判決によりますと、飯塚被告は強盗事件で有罪となり保護観察中だった2024年5月、担当保護司であった新庄博志さん(当時60歳)の自宅で面接中に、首や胸をナイフやおので複数回突き刺し、切りつけるなどして殺害した事実が認定されています。被告は公判で起訴事実を認め、「守護神様の声に従ってやりました」と説明していました。
弁護側は、被告が刑が軽減される心神耗弱状態であったか、あるいは刑事責任能力が全くなかったと主張しました。しかし判決は、起訴前に実施された被告の精神鑑定を行った医師の証言などを詳細に検討し、刑事責任能力に影響を与えるような精神障害は存在しなかったと結論付けました。特に「守護神様」の声については、「被告の思考から生じたひらめきにすぎない」と判断し、弁護側の主張を明確に退けました。
量刑判断の理由と社会的影響
量刑について裁判所は、被告がナイフとおのを事前に準備し、逃走を意識した用意をしていたことから「計画性は高かった」と認定しました。さらに、新庄さんの急所を中心に22か所もの傷を負わせた点について、「極めて執拗で残虐な行為であり、強い殺意があった」と強調しました。
事件の背景として、被告が仕事が長続きしない不満を国にぶつけ、打撃を与えようと考えていたことが挙げられました。判決は「落ち度がないばかりか、何ら恨みのない被害者を国への八つ当たりの道具として利用した」と指摘。さらに「最期まで更生を願っていた被害者は多大な苦痛を受けて生命を奪われた」と述べ、被害者の立場に深く言及しました。
今回の事件については、保護観察制度そのものを破壊する意図までは認められないものの、制度に対する社会的影響は無視できないとも言及されています。被害者が1人である殺人事件の中でも、特に強い殺意に基づく類似事件と比較して、量刑は特に重い部類に属すると判断されました。被告が保護司との面接を形だけのものと捉えていたことなども考慮され、「有期刑が相当と評価することはできない」と結論付けられました。
裁判の様子と関係者の声
飯塚被告は黒色のスーツ姿で法廷に入廷し、谷口裁判長から証言台の前に促されると、一礼して座りました。主文を告げられると、小さくうなずきながら前を向き、判決理由を静かに聞いていました。
元東京高裁判事の波床昌則弁護士は「被害者が1人の殺人事件で無期懲役は重い量刑だ」と指摘しつつも、「被害者を執拗に傷つけている点で、犯行態様が無差別殺人と同じぐらい悪質であることを最も重視したのだろう」と分析しました。さらに「他の保護司に不安を与えた社会的影響の大きさも重くみたのではないか」と述べ、判決の背景を考察しました。
担当保護司として新庄さんから支援を受け、公判の傍聴を続けてきた谷山真心人さん(28歳)は「(被告には)判決でけじめをつけ、罪と向き合ってほしい」と語りました。谷山さんは保護観察終了後も困ったことがあると新庄さんに相談してきたといい、「僕みたいな人間の生き方を変えてくれた」と慕っていました。
公判を通じて、新庄さんが最期まで被告の更生を願っていたことが明らかになり、谷山さんは「新庄さんがやってきたことは一つも間違っていなかった」と実感したと話しました。判決後、谷山さんは新庄さんの自宅を訪れ、保護観察中の面接時に新庄さんがいつも用意してくれた缶コーヒーを2本持参し、自宅前で静かに手を合わせました。「社会人として頑張っていきます。温かく見守って応援してください」と語り、被害者への思いを新たにしました。



