水俣病をめぐり、国と被害者団体の間で溝が埋まらないまま、公式確認から70年が経過した。2026年4月30日、熊本県水俣市の水俣病情報センターで開かれた懇談会では、石原宏高環境相をはじめ環境省や熊本県の職員約40人が、患者・被害者団体の約30人と向き合った。
「こんな矛盾があるか」
懇談会で団体側が「こんな矛盾がありますか?」と発言すると、国の担当者は言葉を詰まらせた。問題となっているのは、環境省の研究班が今年度に実施を予定する地域住民の健康調査の手法だ。
調査手法をめぐる対立
環境省の研究班は、健康調査について「問診・診察」に加えて「脳磁計(MEG)」と「頭部の磁気共鳴断層撮影(MRI)」を用いた手法で進める方針だ。この調査は水俣病被害者救済法(特措法)で実施が定められている。
しかし、この手法は時間がかかり、対象人数が限られる。これに対し、団体側は広域で大人数を対象にした簡易な調査手法を求めている。
公害健康被害補償法に基づく課題
公害健康被害補償法に基づく認定制度も、被害者側からは厳しい批判がある。長年、認定基準が厳格すぎるとして、多くの患者が救済から漏れているとの指摘が続いている。
環境省は「科学的に信頼性の高いデータを得るため」と高度機器の使用を正当化するが、団体側は「これでは多くの被害者が取り残される」と反発している。
70年経過しても埋まらない溝
環境省の前身である環境庁は、公害対策を一手に担うために1971年に発足した。「公害の原点」とされる水俣病は、環境省のルーツと言える。国や県など行政は水俣病の患者・被害者団体と懇談を重ねてきたが、両者の溝は埋まらないまま70年が経過した。
今回の懇談会でも、具体的な合意には至らなかった。被害者団体は「国は真摯に向き合う姿勢を示すべきだ」と訴え、今後の対応を注視する構えだ。



