今年発表された都道府県版ジェンダー・ギャップ指数の経済分野で、三重県が47位となり全国最下位となった。前年の46位からさらに順位を落とし、一見勝之知事は以前から「女性も男性も働きやすい三重県を実現しないと人口は減るばかり」と危機感を示し、ギャップ解消に向けた戦略策定を進めてきたが、改善の兆しは見えない。なぜ低迷が続くのか。その背景と改善への足がかりを探るため、先進県である鳥取県を取材した。
鳥取県の取り組み:無意識の偏見解消から始まった変革
鳥取県は「女性活躍先進県」として知られる。県職員の女性管理職比率は4月時点で27.8%に達し、昨年は10年連続全国1位となり、今年もさらに拡大した。県庁内には「男女協働未来創造本部」が設置され、県民から募った「ジェンダー平等川柳」の入選作が飾られている。その一つに「本日は 女性不在と お茶を出す」という作品があり、職場での無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)を風刺している。同本部は本年度、こうした偏見解消に向けた県民運動を本格化する。
鳥取県前知事の片山善博さん(74)は、1990年代までの県庁の状況を振り返る。「女性は補助的なことはできるが、難しい仕事は男性しかできないという誤った固定観念があった」。自治省(現総務省)から出向で1992年に同県総務部長に就任した片山さんは、課長級以上の会議が男性ばかりであることに違和感を覚えた。職員のキャリアを男女で比較すると、男性は多彩な係を経験している一方、女性は庶務係ばかりだった。
片山さんは「いびつな人事慣行」の改革に着手。例えば財政課では、残業時間が長く折衝の多い仕事は女性には厳しいとされていたが、予算編成作業が集中する冬場の業務を平準化し、ペーパーレス化を進めることで男女ともに働きやすい環境を整えた。1999年に知事に初当選した際には、女性の管理職候補が育っていた。
クオータ制の導入と民間への波及
2000年には、県男女共同参画推進条例に基づき、県審議会などの委員が男女ともに4割を下回らないようにするクオータ制を導入。当初は労働団体などから「男しかいない」と反発があったが、条例違反として突き返した。これにより「隠れた人材だった女性が日の目を見るようになった」と片山さんは語る。ジェンダーギャップ解消の意識は民間にも広まり始めた。
また、県庁内では「男性は逆に家庭内進出を」と呼びかけ、男性職員の育休取得を促進。総務省によると、鳥取県職員の男性育休取得率は69.5%(2024年度)と全国でも上位であり、三重県の48.3%を大きく上回る。後任の平井伸治知事は、家事・育児参画を促す上司「イクボス・ファミボス」を官民のトップとともに宣言。2025年度からは短時間勤務(週30時間程度)でも正職員の待遇を保障する制度を全国の自治体で初めて導入し、一部の専門職を対象に育児や介護と両立しやすくした。この「短時間正社員制度」は民間にも広がりつつある。
三重県の現状と課題:大企業が多いほど格差が顕著
片山前知事は、三重県が経済分野で最下位となった要因を「大企業が多いほど格差が出やすい」と分析する。総務省の経済センサス(2021年)や三重県によると、県内で働く男性の半数弱が製造業、卸売業・小売業に従事。これらの業界の平均月額給与は男性が女性の1.65倍~2.06倍で、他業界に比べて賃金格差が大きい。一方、女性は約4割が医療・福祉、卸売業・小売業に就いている。
厚生労働省の2024年賃金構造基本統計調査によると、労働者1千人以上の県内企業で働く男性は35%(全国平均34.5%)に対し、女性は24.6%(同33.3%)。フルタイムの残業を除く平均月給は女性が男性より約8万8千円低い。三重県には製造業を中心に大手工場が進出しており、大企業では男性が給料の高い正社員や管理職に、女性は転勤のない一般職や非正規に就く風潮が根強いとみられる。
鳥取県の強み:子育て環境と共働き文化
一方、上位の鳥取県。県男女協働未来創造本部の山本雅美本部長は、保育所待機児童数がゼロ(2025年度当初)と子育て環境が充実していることを強調。その上で、人口が少なく「農業が盛んで収穫期以外の現金収入を得るため働きに出る女性が多かった」と昔から共働き家庭が多い背景を説明。大きな産業が少ないことも、格差が小さい理由に挙げた。
片山前知事は「県庁が地方ではプライスリーダー(価値を決める先導者)。いい意味でも悪い意味でも、県庁の処遇が民間の処遇になる」と述べ、行政の本気度が問われると説く。三重県が最下位から脱却するには、まず県庁内での意識改革と制度整備が不可欠であり、鳥取県の事例は多くの示唆を与えている。



