イタリア精神科医が横浜で講演 地域ケアの先進事例「個人の自由尊重が大前提」
イタリア精神科医横浜講演 地域ケアで個人の自由尊重

地域に開かれた精神医療を目指して イタリア医師が横浜で提言

病院ではなく地域で精神疾患を抱える人々を支えるイタリアの取り組みを参考に、日本の精神医療のあり方を考えるイベントが2月26日、横浜市中区で開催された。県弁護士会が企画し、イタリアでの改革の中心人物である精神科医ロベルト・メッツィーナさん(72)が来日し、講演を行った。

イタリアの改革から学ぶ 患者の自由と自発性の回復

メッツィーナさんは1978年、イタリア北部のトリエステにある精神病院に赴任。当時、長期間の身体拘束などで自由を奪われていた患者たちの自発性を取り戻すため、上司らと共に集会を企画した。これが契機となり、24時間体制の地域支援拠点や、患者と地域住民が雇用関係などで助け合う協同組合を設立。これらの取り組みが病院の廃止につながり、1978年には精神病院への新たな患者収容を禁止する「バザーリア法」が公布された。

講演でメッツィーナさんは「専門家が上、患者が下という関係をなくし、平等な立場を築いていったことが改革の核心だ」と語った。心の健康をケアする医療においては、「個人の自由を尊重することが大前提である」と強調。トリエステの事例が特殊なものではなく、他国にも波及する可能性を示唆し、各地の弁護士会や当事者団体、家族会に対し、法改正に向けて政府に働きかけることを提案した。

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日本の現状と課題 長期入院と社会の偏見

厚生労働省の調査によると、2023年時点で日本国内の精神病床に入院している患者数は約25万5千人。このうち約6割が1年以上の長期入院を余儀なくされている。メッツィーナさんと県内の入院経験者によるパネルディスカッションでは、うつ病で閉鎖病棟に入院経験のある50代女性が「あまりに長く入院している人が多く、驚いた」と発言。

女性は「患者との対話が十分ではなく、作業療法と薬物療法の後は、食べて、寝て『はい、頑張って』という繰り返しだった」と振り返る。現在は福祉事業所で当事者スタッフとして働き、「患者が本当に何をしたいか、どうしてほしいのか、とにかく話を聞くことが重要だ」と訴えた。

さらに、社会の風当たりの強さも懸念材料として挙げた。「退院後、不動産店から入居を断られ、行く場所がないという話も聞く。地域の人々に知識を深めてもらう必要がある」と、開かれた医療の実現を求めた。このイベントには会場参加とオンライン配信で約160人が聴講し、関心の高さが示された。

メッツィーナさんの提言は、日本の精神医療が抱える課題を解決する一つの道筋として、今後も議論が続きそうだ。

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