子ザル「パンチ」、ぬいぐるみ母に抱かれサル山で奮闘 実母は育児放棄も健気な姿に応援の声
千葉県の市川市動植物園で昨年7月に生まれた雄のニホンザル「パンチ」(6か月)は、母ザルの育児放棄により人工哺育で育てられました。今年1月にサル山に戻ったパンチの心の支えは、オランウータンの大きなぬいぐるみです。母親に寄り添うようにぬいぐるみに抱きつきながら、懸命に群れになじもうとする姿が、来園者だけでなくSNSでも人気となり、多くの人の心を和ませています。
小さな体で大きなぬいぐるみを抱え、サル山を行き来する愛らしい姿
小さな体で倍もの大きさのぬいぐるみを引きずり、サル山を行ったり来たりしています。時には母親に甘えるようにじゃれつき、隣でうたたねをする様子も見られます。そんな愛らしい姿を逃すまいと、来園者が「かわいい!」と歓声をあげながら、スマートフォンやカメラで熱心に撮影していました。
パンチは昨年7月26日に生まれ、漫画「ルパン三世」の原作者にちなんで名付けられました。母ザルは初産だったことや、夏の酷暑による体力低下からか、育児に興味を示さず、パンチは生まれた翌日から人工哺育に切り替えられ、哺乳瓶のミルクを飲んで育ちました。
ぬいぐるみが母親代わりに 毛足の長さがしがみつきやすく、安心感を提供
ニホンザルの子供は母親に抱きつくことで守られ、安心して育ちます。同園の担当者は育児放棄されたパンチの「母親」候補を探しました。筒状にしたタオルには違和感を示し、他のぬいぐるみでは、力が弱いパンチがつかむことが難しかったのです。
「母親」に選ばれたのは、マイクロブタと触れ合える園内の「なかよしルーム」に飾られていたオランウータンのぬいぐるみでした。毛足が長いため、しがみつきやすい特徴があります。手の部分には布製接着テープがあり、パンチをぎゅっと抱きしめることもできました。
サル山での生活に徐々に慣れ、社交性を見せるパンチ
サル山には約60匹が暮らしています。パンチをサル山に置いたおりの中で過ごさせるなどして徐々に慣れさせ、今年1月19日にサル山に戻しました。他のサルから威嚇されたり、周囲のサルが騒いで不安を感じたりすると、「母親」のもとに駆け寄って抱きつきます。成長とともに一匹で「遊び」に出かける時間も増えましたが、しばらくすると戻ってきて傍らでくつろぐ姿が見られます。
同市動植物園課の安永崇課長は「サル山に一生なじめないサルもいる中、パンチは社交的です。他のサルに背中をくっつけて打ち解けようとしている」と笑顔で話します。
SNSで人気爆発 「がんばれパンチ」のハッシュタグで応援の声が続々
「サル山の中にぬいぐるみを持った子ザルがいます」「成長をあたたかく見守ってください」と、同園が5日、パンチの生い立ちとともに、ぬいぐるみと過ごす写真を園の公式X(旧ツイッター)に投稿したところ、「いいね」が7万件を超え、閲覧数は310万件超に上りました。
サル山での日常を伝える投稿には「#がんばれパンチ」のハッシュタグが付けられ、応援コメントが多数寄せられています。ぬいぐるみには「オランママ」「オラン母」のニックネームが付けられ、投稿には「大事そうに抱えてて、健気で可愛すぎ」「オラン母さんから離れて、他のお猿とコミュニケーションとれるようになってきている」など、温かいコメントがあふれています。
先輩サル「オトメ」の例も ぬいぐるみで育ち、群れに順応した成功例
動植物園には、パンチの先輩となるサルがいます。2008年に生まれた「オトメ」です。同じく育児放棄によって人工哺育で育った雌のサルで、人気キャラクター「リラックマ」のぬいぐるみを肌身離さず抱える姿が当時人気となりました。オトメはその後、群れに順応し、出産も経験しています。
安永課長は「オトメのように、サル山で元気に過ごして幸せになってもらいたい」とパンチに温かいまなざしを向け、「多くの人に園に来てもらい、支えてほしい」と呼びかけています。
販売元のイケアがぬいぐるみを寄贈 予備として活用され、パンチの癒やしに
パンチが親代わりにしているオランウータンのぬいぐるみの販売元である「イケア・ジャパン」(船橋市)は17日、オランウータンなど同社の動物ぬいぐるみ33個を市川市に寄贈しました。市動植物園が予備のぬいぐるみなどとして活用します。
オランウータンのぬいぐるみは、熱帯雨林の動物の保護など意識啓発も狙った商品で、目などが頑丈に縫い付けられて簡単に取れないようになっており、洗うこともできます。
同園のサル山前広場でこの日寄贈式が行われ、同社のペトラ・ファーレ社長兼CSOが「SNSで知り、心を動かされました。(ぬいぐるみが)パンチ君の癒やしになってうれしい」と話しました。



