介護サービス廃止の波が湖西市を直撃
静岡県湖西市で、訪問入浴やデイサービスなどの介護サービスが次々と廃止されている。本紙のユースク取材班には、体の不自由な妻を介助する60代の男性読者から「市社会福祉協議会が訪問入浴をやめた。市内に代わりの事業所はなく、困惑している」との悲痛な声が寄せられた。取材を進めると、介護現場の厳しい経営事情に振り回される利用者の実態が浮かび上がった。
訪問入浴廃止の背景
男性は数年前から週1回、市社会福祉協議会の訪問入浴サービスを利用していた。しかし2月末、市社協はこのサービスを廃止。理由は「赤字」だった。男性は「利用者は高齢者や障害者で、声を上げられない人ばかり。継続できる方法を考えてほしかった」と憤る。最終的に市外の事業者を見つけたが、それまでは不安な日々を過ごしたという。
市社協の担当者は「なんとか続けてきたが、急激な人件費上昇と物価高に耐えきれなくなった」と肩を落とす。訪問入浴では看護師と介護職員の計3人が専用車で利用者宅を訪問するため人件費がかさみ、物価高や燃料費高騰も打撃に。利用者も12人(1月時点)と少なかった。サービス対価の基本報酬は公定価格で、コスト増を簡単に価格転嫁できない構造的な問題がある。
デイサービスも廃止、訪問介護は継続も厳しい
市社協は訪問入浴に加え、通所のデイサービスも同時に廃止。訪問介護については「市内に事業者が少ないため継続している」と説明するが、収支は厳しい。市内ではさらに、社会福祉法人「新和会」が運営する「こさいホームヘルパーステーション」(新居町)が3月末で休止した。担当者は「ここ数年で収支バランスが悪化した」と話す。2024年度の介護報酬改定で基本報酬が約2%引き下げられ、賃金上昇や物価高が追い打ちをかけた。訪問介護には身体介護と生活援助があるが、報酬の低い生活援助の利用者が多かったことも経営を圧迫した。
利用者の声「介護は必要な仕事なのに」
筋ジストロフィーの患者片山八雲さん(22)は約10年間、同事業所から障害福祉サービスを受けていたが、休止に伴い事業者を切り替えざるを得なかった。現在は「おうちで暮らすサポートセンター」(新居町)に洗髪や清拭を依頼している。サービスには満足しているが、以前の事業者に対して「どうにか続けてほしかった」との思いは消えない。「介護は必要な仕事なのに大事にされていない気がする。国に現状を見てほしい」と訴える。
今月1日時点で市内の訪問介護事業者は6事業所。3月に開業した「スターハート訪問介護」(鷲津)は、撤退した事業所の利用者や職員の受け皿を目指す。担当者は「厳しい状況でも誰かがやらないと介護難民が出てしまう」と危機感をにじませる。
全国的な介護事業者倒産の増加
東京商工リサーチによると、2025年の介護事業者の倒産は全国で176件に上り、2年連続で過去最多を更新。うち訪問介護が91件と半数以上を占めた。人手不足や売り上げ不振が主な原因で、2024年度の基本報酬引き下げも影響した。国は今年6月、介護報酬を臨時改定する。本来は2027年度の予定だったが、介護現場の処遇改善を早期に図る。湖西市内の事業者からは「人件費や物価上昇に介護報酬が追いついていない」と基本報酬の見直しを求める声が上がっている。



