がん克服から始まったランニング人生、60歳目前に節目の達成
2026年3月1日に開催された「東京マラソン2026」(読売新聞社など共催)において、千葉県流山市に住む会社員の土田貴彦さん(59)が、記念すべき100回目のフルマラソン完走を成し遂げました。この快挙は、30代で経験した胃がんとの闘いをきっかけに始まったランニング生活の集大成とも言えるものです。
胃がん発覚と手術、そして新たな健康課題
土田さんが33歳の時、定期健診で胃がんが発見されました。診断はステージ2。当時、長女と長男はまだ小学生で、妻は大きなショックを受けていましたが、土田さん自身は「早期発見で良かった」と前向きに捉え、気丈に振る舞いました。胃の4分の3を摘出する手術は成功し、約4か月の休職を経て職場に復帰します。
しかし、手術の影響により、「ダンピング症候群」と呼ばれる症状に悩まされるようになりました。これは、胃の切除によって食べ物が急速に小腸へ流れ込み、大量のインスリンが分泌されて低血糖を引き起こすものです。仕事中に激しいめまいが生じ、会話も困難になるほどでした。小さなおにぎりをゆっくり食べるなどの対策を試みても、症状は改善しませんでした。
ある時、甘い飲み物を摂取すると血糖値が上昇し、めまいが収まることに気づいた土田さんは、一気に飲み干して仕事に臨むようになります。しかし、この習慣が原因で、40歳の時に高血糖による糖尿病予備軍と診断されてしまいました。
ランニングで健康を取り戻す決意
健康状態の悪化を危惧した土田さんは、ランニングを始めることを決意します。学生時代は陸上部に所属していた経験もあり、社内のクラブに誘われて駅伝大会に出場。練習を共にする仲間から刺激を受け、再び走ることの楽しさを実感しました。
44歳で沖縄県・石垣島のフルマラソンに初出場すると、絶景を楽しみながら走る爽快感に魅了され、各地の大会への参加を重ねていきます。ほぼ毎日15キロを走る練習は、多忙な日常の中での大切なルーティーンとなりました。
100回目の完走、そして未来への希望
「60歳になるまでに100回走れるかも」という思いが数年前に芽生え、60回目の誕生日を目前に控えた東京マラソンへの挑戦は、土田さんにとって大きな念願でした。4月並みの穏やかな陽気に恵まれたレースでは、タイムは3時間28分31秒と、最初のフルマラソンより遅くなりましたが、「初心を思い出せた」と満足げに語りました。
土田さんは、「こつこつ続ければ、挑戦は達成できると見せられた」と喜びを表現。胃がんの経験を通じて得た「自分らしくが大事」という哲学を胸に、今後もランニングを続けていく意向です。この感動的なストーリーは、健康への意識改革や逆境を乗り越える力について、多くの人々に勇気を与えるものとなるでしょう。



