「乙女チック」ブームの真相とは?太刀掛秀子展で紐解くkawaiiの源流
「乙女チック」ブームの真相とは?太刀掛秀子展で紐解くkawaiiの源流

1970年代半ばから後半にかけて、少女漫画誌『りぼん』(集英社)で一大ブームを巻き起こした「乙女チック」。その中心的な存在だった漫画家・太刀掛秀子さん(70)の世界を紹介する初の展覧会「太刀掛秀子展~『りぼん』’70sおとめチック☆エポック~」が、東京都文京区の弥生美術館で開かれている。

度肝を抜かれるコマ割りの巧みさ

内覧会は4月3日。「乙女チック」という言葉から「非現実的で夢のように甘い物語」を想像して原画を鑑賞したが、その印象はすぐに覆された。コマ割りが非常に巧みで、登場人物の内面や回想を連続する小さなコマや、ページの縦半分を占める巨大なコマで表現する手法は、見る者を圧倒する。どの作品も、軽やかな恋愛というよりは深刻な内容で、高度なテクニックと豊かな物語性に満ちている。

代表作『花ぶらんこゆれて…』の魅力

展覧会から戻り、代表作『花ぶらんこゆれて…』(1978~80年連載、全4巻)を急いで取り寄せて読んだ。主人公は、フランス人の母親を持つ金髪碧眼のるり。母が異国に馴染めず帰国した後、父は再婚。洋館を舞台に、継母、異母妹、血の繋がらない兄、妹の家庭教師との間で愛憎劇が展開する。波乱の展開と各人物の内面描写は読み応えがある。当時、『週刊少年ジャンプ』で『サーキットの狼』などに夢中だった記者は、女子がこれほど複雑な物語を読んでいたことに驚いた。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

「乙女チック」の新しさと「かわいい」の変容

漫画研究家の藤本由香里明治大教授は、「乙女チックは恋愛を、普通の女の子が学校のクラスの男子を好きになるという日常のレベルで描いた点が新しかった」と指摘する。それまでの少女漫画は外国を舞台にした大人の恋愛が主流だったが、乙女チックは読者の身近に恋愛を引き寄せた。また、作品の世界は現実そのものではなく、おしゃれな洋館や『かわいい』もので彩られた空間が特徴。『りぼん』の付録が人気を博すと、「かわいい」の用法も変化し、人間や動物だけでなく物に対しても使われるようになった。「kawaii」は今や世界共通語である。

枠からはみ出した太刀掛秀子の世界

乙女チックの代表格は陸奥A子さんと田渕由美子さんだが、太刀掛さんはシリアスな長編を手がけた。藤本さんは「絵は3人ともかわいく、付録になると差はない。それで3人が代表とされた」と語る。しかし、太刀掛さんの作品は乙女チックの枠をはみ出している。展示では、少女漫画の枠と自分の描きたい世界観の間での葛藤も明かされている。藤本さんは「カラー原画の美しさと、現実・回想・想念を層構造にして見せる巧みなコマ割りを味わってほしい」と話す。

展覧会概要

太刀掛秀子展は6月28日まで。展示替えがあり、前期は終了。中期(4月28日~5月24日)、後期(5月26日~6月28日)で約400点の原画を入れ替えて展示。一般1200円。

太刀掛秀子(たちかけ・ひでこ)は1956年広島県生まれ。1973年、高校生の時に第6回「りぼん新人漫画賞」で初の大賞「入選」を受賞。同年デビューし、人気を博したが、1986年を最後にストーリー漫画を休止。代表作に『なっちゃんの初恋』『ミルキーウェイ』『花ぶらんこゆれて…』がある。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ