郡山市立美術館で開催中の「北斎・広重 大浮世絵展~二大巨匠!夢の競演」では、江戸後期を代表する絵師、葛飾北斎(1760~1849年)と歌川広重(1797~1858年)による浮世絵版画の名作が一堂に会し、画題や表現など多彩な観点から両巨匠を見比べる「対決」が楽しめる。担当学芸員の塚本敬介さんと新田量子さんに、対決のポイントや作品の魅力を3回にわたり聞いた。初回のテーマは「波」と「花火」。
対決その1「波」
浮世絵で「波」といえば、北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」が世界的に有名だ。一方、広重は波をどのように描いたのか。江の島観光の風景を描いたとされる「相州江之嶋岩屋之図」と比較した。
対照的な波の描写
塚本さんは「北斎の波は大胆で、世界的にも知られていますが、広重も波を描いています。北斎がダイナミックなのに対し、広重は穏やかで叙情性を重視した描き方です。両者の青の色合いにも注目してください」と語る。
新田さんは「広重の叙情性は全体的な傾向です。北斎は構図がダイナミックで、波しぶきや波頭まで細かく描き込んでおり、他に類を見ない表現です。広重は波をよく観察している印象を受けます」と解説する。
人物の表情から読み解く波の質
「人物がどんな表情で何をしているのかを見るのも面白いです。北斎の作品では、人が舟にしがみついていてなすすべがない感じです」と新田さん。塚本さんは「広重の画面右手の人々はお酒を飲んでいるのでしょうか?のんびりしていますね。北斎の方は船酔いしそうです。みんな無事だといいのですが」と笑う。
対決その2「花火」
夏に花火を楽しむ心は、昔も今も変わらない。いずれも江戸の両国・隅田川の花火を描いた、北斎の「江都両国橋夕涼花火之図」と広重の「名所江戸百景 両国花火」をひもとく。
作品の背景
塚本さんは「隅田川の夕涼みは、陰暦5月28日から3カ月間許可されていました。北斎はその川開き、広重は川じまいの花火を描いたとみられます。『名所江戸百景』は広重最晩年のシリーズで、本人は完成を見ずに亡くなりました」と説明する。
表現の違い
「北斎はまだ明るさの残る夕方、広重は日没後の情景でしょうか。どちらも見物客でいっぱいですが、北斎が人物を細かく描き分けているのに対し、広重は影で表していて、にぎやかさの中に郷愁を感じます」と新田さん。
塚本さんは「北斎はにぎわいを描きたかったのかもしれません。水茶屋なども出ていて、本当にお祭りみたいです。人物も相当数いるのに、それぞれ表情が違います。広重はシルエットにすることで、画面に雰囲気を出していますね」と分析する。
「暗い空に映える広重の花火は、筆ならさっと描けそうですが、それを版画で表現したのが面白い。彫師や摺師の技術の高さがうかがえます。北斎の花火は、そう言われないと分からないかもしれません…」と新田さんは付け加える。
「どっち派」ですか?
新田さんは「夏の終わりの名残惜しさを感じる広重でしょうか」と答え、塚本さんは「選べないな…両方とも好きです」と語る。
動的な北斎に対して叙情的な広重。この対比が鑑賞のポイントになりそうだ。
名作が手のひらサイズに!カプセルトイ販売
会場では、北斎と広重の浮世絵を手のひらサイズで楽しめるカプセルトイ「ミニチュアアートイーゼル」を1回500円で販売している。ラインアップは、北斎の「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」「冨嶽三十六景 凱風快晴」、広重の「東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景」「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」「東海道五拾三次之内 庄野 白雨」の全5種類。小さいながらも精巧な作りが収集欲をかき立てる。全種類制覇を目指してみてはいかがだろうか。
展覧会概要
会期は6月21日まで。開館時間は午前9時半から午後5時(入館は午後4時半まで)。休館日は月曜日。観覧料は一般1500円、高校・大学生1000円で、中学生以下と障害者手帳を持っている人は無料。主催は実行委員会(郡山市立美術館、福島中央テレビ、福島民友新聞社)。問い合わせは福島中央テレビ事業部(電話024-924-1100、平日午前9時半~午後5時半)まで。



