北海道大学が開学150年を迎えるにあたり、3月末に正門付近に設置した看板が物議を醸している。看板には「先住民族に対する敬意の表明」と題し、アイヌ民族がかつてキャンパスに暮らしていた歴史的事実が刻まれている。しかし、その内容について専門家からは疑義が相次いでいる。
看板の内容と国際的な慣行
看板の文章はカタカナ表記のアイヌ語、日本語、英語で記され、明治初期までアイヌ民族のコタン(集落)があった事実に触れている。「明治の初めに和人にとって『開拓』と呼ばれた事業が進められたことで、アイヌ民族はこの地を離れざるを得なくなりました」と記し、アイヌ民族に「深い敬意」を示すとしている。
これは国際的に「Land Acknowledgement(土地への謝意または承認)」と呼ばれる表明で、集会や講義、看板などでその土地が先住民族の土地であり、植民地化の背景を認める政治的な声明とされる。
専門家の指摘
国内外の先住民族政策に詳しい室蘭工業大学の丸山博名誉教授は、「看板の文言には主語が欠落している。自分たちの責任や加害性に触れず、あたかも自然に『開拓』が進んでいったような書きぶりで、他人事のようだ」と批判する。
明治政府は北大の前身である札幌農学校を設立し、アイヌ民族の土地を収奪した歴史がある。しかし看板では、そうした背景に対する謝罪や反省の言葉は一切なく、単に敬意を表明するだけにとどまっている。
背景と今後の課題
北大は開学150年を記念し、アイヌ民族との共生を掲げる方針を示しているが、今回の看板をめぐる議論は、大学の歴史認識の甘さを露呈した形だ。アイヌ民族団体からも「謝罪なき敬意は形式的で、真の和解にはつながらない」との声が上がっている。
今後、北大がどのように対応するのか注目される。専門家は「真の敬意を示すためには、過去の不正義を認め、謝罪し、具体的な行動を伴うべきだ」と指摘している。



