敵基地攻撃ミサイル配備が始動 熊本・健軍駐屯地に住民の不安広がる
防衛省は2026年3月31日、敵基地攻撃能力(反撃能力)を有する長射程ミサイルの配備を正式に開始した。厳しさを増す安全保障環境への対応を目的としているが、配備地域が攻撃目標となる危険性が高まる可能性も指摘されている。これに対し、地元住民の間には疑問や不安の声が少なくない。
「ミサイルは何発あるの」住民の素朴な疑問に職員は「言えません」
3月17日、長射程ミサイルの配備先である陸上自衛隊健軍駐屯地(熊本市)で、九州防衛局が関連装備の展示会を開催した。参加した地元自治協議会の城戸健次会長(76)は、対応する職員に「ミサイルは何発あるの。(敵を相手にするには)足らんでしょ」と率直な疑問を投げかけた。しかし、職員は「言えません」とだけ回答し、具体的な説明はなかったという。
城戸会長はこの対応に不満を感じており、「有事の際にどこに避難すればいいのか」といった切実な質問にも明確な回答が得られなかったと語る。健軍地域で半世紀以上にわたり水道工事に携わってきた経験から、地域の特性を熟知する立場として、防衛装備の配備が住民生活に与える影響を懸念している。
防衛政策の転換点となる配備 地元では抗議集会も
今回の長射程ミサイル配備は、日本の防衛政策における重要な転換点と位置づけられている。政府は抑止力の強化を強調するが、地元では配備に反対する抗議集会が開催され、約1200人が参加した。参加者からは「なぜ私たちの近所に配備されるのか」という根本的な疑問や、地域が狙われる不安の声が相次いだ。
また、ミサイル関連の車両が未明に駐屯地に搬入された際には、事前の連絡がなかったことから地元関係者が「大変残念」と不快感を示すなど、意思疎通の不足も問題視されている。
統合幕僚長は「抑止力の方が大きい」と主張
防衛省側は、長射程ミサイルの配備について、地元の不安よりも「抑止力の方が大きい」との見解を示している。統合幕僚長は、安全保障環境の変化に対応するためには、反撃能力を持つ装備の配備が不可欠だと説明している。
しかし、住民の間では、抑止力の実効性に対する疑問が根強く残っている。城戸会長をはじめとする地元住民は、配備が地域の安全を本当に高めるのか、それとも逆に危険を招くのか、明確な説明を求め続けている。
防衛省は今後、地元への説明会を重ね、理解を得る努力を続ける方針だが、住民の不安を完全に払拭するには至っていない。安全保障と住民の安全の両立が、今後の大きな課題となっている。



