米航空宇宙局(NASA)の火星有人探査計画について、予算不足を理由に2030年代半ばへ延期される可能性が浮上した。米政府監査院(GAO)が2026年5月7日に公表した報告書で明らかにされた。
計画の現状と課題
報告書によると、NASAは当初、2020年代後半から2030年代初頭にかけての有人火星探査を目指していた。しかし、アルテミス計画による月面探査の遅延や、宇宙船「オリオン」の開発費増大などにより、火星探査に充てる予算が大幅に不足しているという。
技術的障壁
また、火星への有人飛行には、長期宇宙滞在に対応する生命維持システムや、火星着陸・離陸技術の確立が必要だが、これらの技術開発も計画通りに進んでいない。
- 放射線防護技術の実証試験が未完了
- 火星での燃料製造技術の実証が遅延
- 有人火星着陸機の設計が未確定
議会の反応
報告書を受け、米議会ではNASAの予算配分見直しを求める声が強まっている。一部議員は「宇宙開発における国際競争が激化する中、計画の遅延は安全保障上のリスク」と指摘。一方で、予算増額には慎重な意見も根強い。
NASAは声明で「火星探査は依然として最優先事項の一つだが、現実的なスケジュールで進める必要がある」と説明。2027年度予算要求で、火星探査関連経費を前年度比15%増とする方針を示した。
国際協力の可能性
こうした状況を受け、NASAは欧州宇宙機関(ESA)や日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)などとの国際協力強化を模索。特に、有人火星探査に必要な大型宇宙船の開発や、火星基地建設のための物資輸送で、国際分担の拡大が検討されている。
専門家は「火星探査は一国では負担が大きすぎる。国際協力なくして実現は難しい」と指摘。各国の宇宙機関も協力に前向きだが、具体的な枠組みづくりには時間がかかるとみられる。



