サイバー犯罪の高度化に対応 愛知県警が人材確保策を強化
愛知県警察は、急速に進化するサイバー犯罪に対応するため、若年層へのアプローチと採用制度の拡充に乗り出している。2月中旬、県警情報技術戦略課が主催した「サイバー捜査官」業務説明会では、高校生や大学生、専門学校生など約20名が参加し、警察業務の最前線を体験した。
体験型説明会で若者の関心を喚起
会場に設けられた体験ブースでは、参加者たちがノートパソコンを操作し、押収品を想定した端末データの解析を疑似体験。画面上には次々と証拠データが表示され、捜査の手がかりを探るプロセスを学んだ。県警が独自開発した捜査支援ツールや、民間企業と共同開発中の生成AIを活用した似顔絵作成システムにも触れ、技術の実用性を体感した。
刈谷市の刈谷工科高校2年生、黒田旺甫さん(17)は「警察は堅いイメージがあったが、印象が変わった。ツールはパソコンに詳しくない人でも使いやすい構造だと思った」と語り、新たな発見を得た様子だった。この体験型説明会は今年度から始まった取り組みで、サイバー捜査官の仕事を身近に感じてもらうことを目的としている。
採用対象を拡大し即戦力を確保
サイバー捜査官は、ネットワークを利用した犯罪の捜査や、押収したパソコン・スマートフォンの解析などを担当する専門職だ。愛知県警は2002年から専門性の高い捜査官の採用試験を実施してきたが、受験資格は大学卒業者に限られていた。例年2~3名が採用され、専門部署で活躍している。
しかし、サイバー犯罪の増加と高度化を背景に、2026年度の採用からは従来の大卒者(上限35歳)に加え、高卒程度の学歴を持つ35歳までの人材も受験可能となる。さらに、即戦力の確保を目的に、IT関連の実務経験を3年以上持つ人材を対象とした「サイバー特別捜査官」の新規採用も開始する。
民間からの転職者が語る現場の実情
現在、サイバー捜査官として働く男性巡査部長(35)は、民間IT企業から転職した一人だ。民間ではシステム構築や運用に携わり、国外からのサイバー攻撃への対応にも追われた経験を持つ。転機は警察官の兄から聞いた採用制度の存在だった。
「守ることしかできない民間での仕事と違い、犯人を追い、取り締まることができる」という思いから受験を決意し、2017年に採用された。交番勤務や捜査部門を経て、現在は情報技術戦略課で技術指導などを担当している。
印象に残る経験として、サイバー犯罪の容疑者宅を捜索した際のエピソードを挙げる。専門知識に関する容疑者の質問に即答すると、容疑者が「さすがですね」と態度を一変させ、捜査が円滑に進んだという。「自分のスキルが事件解決に直結したと実感した瞬間だった」と振り返る。
解析件数の増加と人材確保の課題
県警が手がける通信機器の解析件数は昨年1年間で約2500件に上り、単純計算で1日7件前後を処理している。現状で人手不足が顕在化しているわけではないが、今後の需要増を見据え、体制の強化は急務だという。
一方、県警全体の採用倍率はここ数年で低下傾向にあり、民間企業との人材獲得競争も激化している。県警幹部は「技術の進歩とともに高度化する犯罪に立ち向かう力を維持するためにも、優秀な人材の確保は最重要課題だ」と強調する。
愛知県警は、体験型説明会を通じて若年層の関心を高めるとともに、採用対象の拡大によって多様な人材を確保し、サイバー犯罪対策の強化を図っていく方針だ。



