安全なAI社会へ「ブレーキ役」トレンドマイクロ社長エバ・チェン氏
安全なAI社会へ「ブレーキ役」トレンドマイクロ社長

[LEADERS]安全なAI社会へ「ブレーキ役」…トレンドマイクロ社長 エバ・チェン氏

サイバーセキュリティー分野で世界トップクラスのシェアを持つトレンドマイクロは、AI(人工知能)技術の急速な発展にどう向き合うのか。エバ・チェン社長に聞いた。

高性能化 サイバー攻撃巧妙に

米アンソロピックの「クロード・ミュトス」などの高性能AIが開発され、サイバー攻撃に対する懸念はかつてないほど高まっている。トレンドマイクロは世界有数のサイバーセキュリティー企業であり、創業から38年間、インターネットやクラウドなど、ITインフラが大きく変化するたびに新たな領域に進出し、成長してきた。次に訪れる大きな変化の波がAIであると考える。

AIを悪用することで、より高速に、より巧妙にサイバー攻撃を仕掛けられるようになっている。だからこそ、防御側もAIを活用する必要がある。従来のセキュリティーソフトは、フローチャートのような形で、あらかじめ取るべき対応策を設定していた。新しいソフトは、複数のAIが独自に考え、互いに協調しながら状況に対応する。AIを活用することで、どこが危険か、どのような対策を打つべきかが判断できるようになるのだ。

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4月にアンソロピックとの提携を発表した。AIの安全や倫理について真剣に考えているアンソロピックの技術を基盤に、サービスを強化していく。AIはソフトウェア産業を破壊するのではなく、新たな成長の基礎を提供してくれると考える。

セキュリティーは、車のブレーキのようなものである。より安全に、より速く社会が前進するために欠かせないブレーキとしてのセキュリティーソフトを提供したいと考えている。

日本の経営者から学ぶ

1988年、米ロサンゼルスで創業した後、96年に東京に本社を移転。98年に株式を店頭公開し、2000年に東京証券取引所に上場するなど、日本に根差し、成長を遂げてきた。チェン氏は、日本の経営者から多くを学んだと語る。例えば、品質へのこだわりや、長期的な視点での経営など、日本企業の強みを取り入れてきた。また、日本市場での成功が、グローバル展開の基盤となった。

現在、トレンドマイクロは世界中で約7000人の従業員を抱え、そのうち約1000人が日本に拠点を置く。日本は依然として重要な市場であり、研究開発の中心地でもある。

AIの倫理と安全性

AIの急速な発展に伴い、倫理や安全性への懸念が高まっている。チェン氏は、AIを安全に利用するためには、技術だけでなく、法的枠組みや国際的な協力が必要だと指摘する。トレンドマイクロは、AIの悪用を防ぐための技術開発に注力するとともに、業界団体や政府と連携して、AIの倫理基準の策定にも貢献している。

「AIは素晴らしい可能性を秘めているが、同時にリスクも存在する。私たちは、そのリスクを最小限に抑えながら、社会がAIの恩恵を最大限に受けられるようにする責任がある」とチェン氏は語る。

未来への展望

トレンドマイクロは、今後もAIを活用したセキュリティーソリューションの開発を加速する。特に、クラウドセキュリティーやエンドポイントセキュリティーの分野で、AIを活用した新製品を投入する予定だ。また、アンソロピックとの提携を通じて、より高度なAIセキュリティー技術の研究開発を進める。

チェン氏は、「AIの時代において、セキュリティーはますます重要な役割を果たす。私たちは、その先頭に立ち続ける」と決意を新たにしている。

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