ナフサ供給不安で岩手の事業者悲鳴、スーパーの包装材一斉値上げ「もう我慢の限界」
ナフサ供給不安、岩手の事業者悲鳴 包装材一斉値上げ

中東情勢の緊迫化に伴い、原油由来のナフサ(粗製ガソリン)の供給不安が岩手県内でも広がっている。ナフサを原料とするプラスチック製の食品トレーの値上がりや包装材の調達の遅れなど深刻な影響が出始めており、小売業者などからは悲痛な声が上がる。

価格転嫁に苦慮するスーパー

「次から次へと値上げで、もう我慢の限界だ」。奥州市水沢の地域密着型スーパーマーケット「Kマート」の千葉志津子常務(68)は表情を曇らせる。

5月中旬、複数の包材メーカーから「6月1日納入分から値上げする」という通知が届いた。総菜用の白色トレーや丼容器、レジ袋、ゴム手袋――。取引していた品目は軒並み20~30%上昇する。1980年の創業以来、こうした幅広い品目の一斉値上げは初めてだという。

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包材は1個あたり1円以下のものも多く、価格転嫁しづらい。店内で作る弁当のご飯を数グラム減らすといった苦肉の策も検討するが、限界もある。チェーン展開する大手と違い、経営するのは地元の1店舗のみで仕入れ値が割高になりがちだ。鈴木悟店長(48)は「一度上がった価格はなかなか元には戻らないだろう」と不安を募らせる。

読めない納期

2月末に米イスラエルの攻撃を受けたイランがホルムズ海峡を事実上封鎖し、ナフサの中東からの輸入はほぼ途絶えた。財務省の発表では、中東からのナフサを含む揮発油の輸入額(4月)は前年同月比72・8%減。米国などからの代替調達が進むが、輸入単価はイラン攻撃前の1キロ・リットルあたり6万円台から10万円台に急騰した。

原料高は県の特産品にも直撃。南部せんべいを製造販売する「小松製菓」(二戸市)では包装用フィルムの仕入れ値が6月から最大40%上がり、コスト増は年間4000万円~5000万円に上る見込みだ。

県内の菓子・パン製造業者140社が加盟する県菓子工業組合(盛岡市)の菊地清理事長(70)は、値上げ以上に「納期が全く読めない」ことを懸念する。菓子の包装は店ごとの仕様で作るオーダーメイドが多い。以前は発注から1か月ほどで届いたというが、「納品まで5か月かかると言われた店もある」と明かす。

「数か月かかる」供給回復

高市首相は5月25日の記者会見で、ナフサ由来の石油製品は「年を越えて供給継続が可能」との考えを明らかにした。ただ、菊地理事長は「供給は足りているというのは政府レベルの話。サプライチェーン(供給網)の川下に届くまでは最低、数か月かかる」との見方を示す。中東情勢の収束時期は見通せず、原料高の余波は当面続きそうだ。

自動車整備工場にも打撃

原油の供給不足は自動車整備の現場にも影を落とす。盛岡市の白石自動車工業では、エンジンオイルの仕入れ量が落ち込み、ナフサ由来の塗装用シンナーの高騰も経営への打撃となっている。

同社は4月上旬、オイル交換単体での受け付けを停止した。卸売業者からの供給が半減したためで、これまでに約20件を断ったという。客からは「オイル交換をしないで車が壊れないか」と心配の声も上がる。現在は車検や定期点検時に限って対応しており、木村颯副社長(32)は「少量が入荷できたとしても、すぐに再開はできない。供給が安定して初めて踏み切れる」と語る。

店頭価格の上昇も進む。コンパクトカーのオイル交換代は、3月の4350円から5月末には4950円に上昇。板金塗装用シンナーは仕入れ値が45%も値上がりした。

木村副社長は「先行きが見通せないのが一番の不安。国は流通のどこで目詰まりが起きているのかを示してほしい」と訴える。

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