中国南東部の江西省贛州市南部では、レアアース採掘場跡地に造成された工業団地に電池や磁石などの関連工場が立ち並ぶ。かつての採掘場は周辺に広がり、赤茶けた大地が延々と続く。採掘に使用されたため池も残り、濁った水がたまっている。
習政権のレアアース戦略と環境への代償
中国の習近平政権は昨年、レアアースの輸出規制を外交カードとして活用し、トランプ米大統領から関税引き下げの譲歩を引き出した。国際エネルギー機関によると、中国は埋蔵量の5割、採掘量の6割、精錬量の9割を占める。しかし、その絶対的優位の裏には膨大な環境負荷が存在する。
野放図な採掘の歴史
贛州市では1990年代に4千以上の採掘場が乱立した。「レアアース商店」の看板を掲げた雑貨店はかつて作業員でにぎわい、地元男性は「あっちもこっちも採掘場だった。昔はいい商売だった」と懐かしむ。近くには「レアアース食堂」もあったという。
エネルギー安全保障や次世代産業の主導権を確保するため、中国は再生可能エネルギーへの転換を急ぐが、電気自動車や電池、風力タービンの製造にはレアアースが不可欠だ。皮肉にも、その採掘は環境に大きな負担を強いている。
環境破壊の実態
2000年代まで中国南部では、土壌を削り硫酸アンモニウムなどでレアアースを溶かす「堆浸法」が主流だった。2012年の中国政府報告書によれば、レアアース1トンの生産で2千トンの廃棄物が生じる。同年、国営新華社通信は「各国がレアアースを基に緑の未来を築こうとしているが、彼女の緑の故郷はすでに破壊された」と、土壌流出や水質汚染に苦しむ高齢女性の苦境を報じた。
一方、1980年代まで生産の中心だった米国やオーストラリアは、環境対策コストの増大や中国の安値攻勢で採掘から撤退。2000年代以降、中国依存の構図が固まり、欧米メディアは「戦略的な失敗」と指摘する。
修復の現状と課題
中国側にも悔悟がある。中国メディアはレアアースが「白菜のような安値で売られた」と振り返り、野放図な採掘を「子孫を絶やす金もうけ」と表現する。当局は2000年代以降、環境対策に本腰を入れたが、2012年には贛州市だけで環境修復に380億元(約9千億円)が必要と見積もった。
同市南部の上甲村には修復モデル地域がある。地元当局は9億元(約230億円)を投じ、サッカーコート55面分の39万平方メートルを修復。敷地は緑で覆われ、小鳥の声が聞こえ、太陽光パネルも設置された。作業した男性は「昔は砂漠みたいにはげ上がった土地だった」と感慨深げに語る。しかし、人工湿地を指さし「澄んで見えるが、魚も何もいない。回復にはまだ何十年もかかる」と課題を指摘する。



