タウンページ136年の歴史に静かな終止符
店舗や企業の連絡先を職業別に掲載してきたNTTの紙の電話帳「タウンページ」が、2026年3月末をもって発行を終了する。その源流は1890年(明治23年)にまで遡る「電話加入者人名表」であり、実に136年にわたる長い歴史に幕が下りることとなる。全国の家庭や職場、公衆電話のそばで人々の生活を支えてきたこのサービスは、静かに歴史の一ページを閉じる。
かつての轟音が響いた工場の今
2月下旬、埼玉県入間市にあるNTT印刷の工場を訪れると、かつては轟音を響かせていた高さ14メートルの巨大な印刷機が、所在なげに静かにたたずんでいた。この工場では、最盛期には1日に数十万部ものタウンページが印刷されていたという。昨年11月に最後の印刷作業が完了し、現在は利用者への発送作業が進められている状況だ。
工場長の高柳紀道さん(60)は感慨深げに語る。「黄色のインクが、いちばん早くなくなることが多かったですね」。黄色い表紙は、タウンページのトレードマークとして親しまれてきた。高柳さんは続けて、「無事に印刷が終わり安心する半面、ずっと続けてきたものが幕を閉じる寂しさもあります」と本音を明かした。
この工場自体は今後も業務を継続するが、タウンページを印刷していたフロアは閉鎖が決定している。時代の流れとともに、その役割を終えつつある現場の様子が伝わってくる。
明治時代に始まった「一枚紙」からの歩み
タウンページの起源は、1890年に当時の逓信省が発行を開始した「電話加入者人名表」にある。これは一枚の紙に記された約200件の連絡先リストで、官公庁や銀行、新聞社のほか、大隈重信や渋沢栄一、前島密といった著名人の名前も含まれていた。
この一枚の紙から始まった番号案内サービスは、電話の普及や社会の変化とともに形を変えていった。明治時代のうちに冊子状の形態へと進化し、その後「タウンページ」として全国的に親しまれる存在となっていったのである。
136年にわたる歴史の中で、タウンページは単なる電話帳を超え、「街の百科事典」としての役割を果たしてきた。地域の事業者情報を網羅的に掲載することで、地域経済の活性化にも貢献してきた側面は大きい。
デジタル化の波とサービスの変遷
インターネットやスマートフォンの普及に伴い、紙の電話帳の需要は年々減少してきた。オンライン検索やデジタルマップの利便性が高まる中で、分厚い冊子をめくって情報を探すという行為そのものが、時代遅れと感じられるようになってきたのである。
NTTでは以前から、タウンページのデジタル化やオンラインサービスへの移行を進めてきたが、ついに紙媒体の発行終了という決断に至った。これは単に一つの商品が消えるというだけでなく、情報アクセスの方法そのものが根本から変わったことを象徴する出来事と言えるだろう。
地域に根ざした情報源として長年親しまれてきたタウンページの終焉は、多くの人々にノスタルジーを感じさせるものとなっている。同時に、情報技術の進歩がもたらす社会の変化を改めて実感させる出来事でもある。



