道南スギ生かす家具職人、函館に移住して挑む町の家具屋
道南スギ生かす家具職人、函館に移住

家具の五大産地の一つとして知られる旭川市から、家具職人が少ない函館市に移住し、道南スギを活用した家具作りに励む職人がいる。鳥倉真史さん(48)は「椅子の脚が折れたけど直せないか、という問いに応えられる町の家具屋でありたい」と語る。

道南スギの可能性を追求

昨年秋に函館市で開催した個展では、道南スギやトドマツを使った椅子やテーブルが並び、来場者は滑らかで温かみのある手触りと木の香りを楽しんだ。密度が高く重厚な広葉樹に比べ、スギなどの針葉樹は傷つきやすく家具には不向きとされるが、鳥倉さんは「軽くて軟らかい針葉樹は、高齢者や子ども用の家具や小物に適している」と可能性を強調する。空気を多く含み、断熱性にも優れているという。

慎重な作業と工夫

針葉樹を扱うには慎重さが求められる。傷を防ぐため、作業台は木くずや粉を徹底的に除去し、マットを敷く。木材を接合する際も、別の硬い木材を差し込んだり、接着面を広く取ったりして強度を高める工夫を凝らし、可能な限り丈夫で美しい家具に仕上げる。

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人生の転機と家具作りの道

「自分の好きなことをして、人の役に立つのが喜び」。そう言えるようになるまでには長い道のりがあった。道内の大学を中退後、消防士を目指したが壁にぶつかり、アルバイトを転々とした。製粉会社の正社員になったものの、やりがいを見いだせずにいた。

ある日の通勤中、自転車で道路に飛び出しトラックにひかれかけた。事なきを得たが、「死んでもいい」と思った自分に気づき、「このままではだめだ」と直感。半年後に退職し、31歳で北海道芸術デザイン専門学校に入学。家具作りの道を選んだ。父から「お前の取りえは手が器用なことだ」と言われた言葉が背中を押した。

函館移住と道南スギとの出会い

旭川で職人として修業を積んだ後、函館への移住を決めたのは専門学校時代の恩師の勧めがきっかけだった。それが道南スギとの出会いにつながった。道南地方では戦後に植えられたスギが利用期を迎えており、渡島総合振興局が主催する家具デザインコンペを恩師に紹介された。移住前の2018年に参加し、高齢者が立ち上がりやすい椅子「φ40(フォーティファイ)」で最優秀賞を受賞した。

この作品が名刺代わりとなり、国重要文化財「旧函館区公会堂」の家具調査・修繕の仕事が舞い込み、好スタートを切った。市民や企業の注文に応じながら、幸坂の木製ベンチや函館聖ヨハネ教会礼拝堂の椅子、市の出生祝い記念品の積み木、市立函館博物館へのクイズ看板まで幅広く手がける。最近ではバレルサウナやギターにも挑戦している。

町の家具屋として

発注を受ける際は、相手の心の奥にあるイメージをくみ取ることを心がける。「人が本当に求めているものを形にして感謝される。それが一番幸せ」。頼れる「町の家具屋」を目指して歩み続ける。

鳥倉真史さんは1級家具製作技能士。訓子府町育ち。旭川市の「インテリア北匠工房」(現東神楽町)で修業後、2019年に函館市入舟町の石蔵に家具工房「くらcra」を構えた。市民参加型のものづくり団体「函館工作座」副会長も務める。

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