九州の食品スーパー業界でM&Aが急増、中小規模店舗の再編が加速
九州・山口地域において、中小規模の食品スーパーを対象とした企業の合併・買収(M&A)が相次いでおり、業界全体の再編が急速に進展しています。この動きの背景には、人件費をはじめとする各種コストの上昇に加え、食品販売に力を入れるドラッグストアなど新たな競合勢力の台頭があり、経営環境が一段と厳しさを増していることが挙げられます。人口減少と高齢化が進む中、各企業が今後どのように競争力を強化していくかが、成長の重要なカギを握ると見られています。
イオン九州がトキハインダストリーを完全子会社化
九州各地で総合スーパーを展開するイオン九州(本社:福岡市)は3月10日、大分県内で23店舗を運営するトキハインダストリー(本社:大分市)の全株式を取得し、完全子会社化したことを発表しました。イオン九州の上席執行役員からトキハインダストリーの社長に就任した川村泰平氏は記者会見で、「本日が新たなスタートラインです。既存のブランドをさらに磨き上げ、地域に貢献していきたい」と意欲を表明しました。
トキハインダストリーは、百貨店を運営するトキハの子会社として50年以上にわたり、地元密着型の営業を続けてきました。しかし、同社の前社長である羽田野尚志氏は会見で、ドラッグストアやディスカウント店舗の台頭に触れ、「競合相手が増加し、中小規模のスーパーにとっては非常に厳しい状況が続いていました」と、苦境に直面していた実情を明かしました。
イオン九州は昨年7月にも、長崎県を地盤とするジョイフルサンアルファ(本社:長崎市)を買収しており、積極的な拡大戦略を推進しています。大分県では今後、プライベートブランド(PB)商品の供給を通じて顧客ニーズを取り込み、市場シェアの拡大を目指す方針です。中川伊正社長は、「より多くのお客様にPB商品の価値を実感していただき、当社の市場占有率を継続的に高めていきます」と力を込めています。
業界内で業績の二極化が進行、大手による買収が相次ぐ
九州・山口地域を主要な地盤とする小売大手が、規模拡大を目的に中小スーパーを傘下に収めるケースが近年、目立つようになっています。
「ゆめマート」などを展開するイズミ(本社:広島市)は2024年、大分県内で4店舗を運営するサンライフ(本社:大分市)を買収しました。また、リテールパートナーズ(本社:山口県防府市)は2023年と2025年に、子会社の丸久を通じて宮崎県を地盤とするハツトリー(本社:宮崎市)と永野(同)を相次いで買収しています。同社は「中小スーパーを単に吸収するのではなく、M&Aによる連携を通じて共に成長を目指す」と説明しています。
帝国データバンク福岡支店の分析によると、2024年度の収益を把握できる九州・沖縄のスーパー運営企業約100社のうち、2割が最終利益で赤字を計上しており、その半数以上は売上高50億円未満の小規模スーパーでした。担当者は、「業界内では仕入れ力やコスト吸収力の差によって業績が二極化しています。今後も大手企業による中小スーパーの買収が相次ぐ見込みです」と指摘しています。
このように、九州の食品スーパー業界では、経営環境の厳しさを背景にM&Aが活発化しており、業界再編が加速する様相を呈しています。人口動態の変化や競合の多様化が進む中、各企業がどのような戦略で生き残りを図るかが、今後の注目点となりそうです。



