中国産「宇治抹茶」の海外拡大が止まらない
世界的な抹茶ブームが続く中、中国産の「宇治抹茶」が海外市場で急速にシェアを拡大し、日本の伝統的な抹茶産業に大きな影を落としています。この現象は、単なる商品の模倣を超え、長年培われてきたブランド価値そのものを脅かす深刻な問題として浮上しています。
老舗企業の無念の訴訟と和解
江戸時代中期に創業した抹茶製造の老舗、丸久小山園(京都府宇治市)は、この問題に直面している企業の一つです。同社の小山元也社長(49)は、中国のオンラインサイトで販売されている自社商品と同名の抹茶を発見し、強い無念の思いを抱えています。
「宇治抹茶」と表示されながら中身は中国産の商品が、今も海外市場で流通し続けているのです。丸久小山園は2022年12月から、同じ宇治市内の茶問屋を相手取り訴訟を起こしました。しかし、2025年4月の京都地裁判決では、中国での販売に日本の法律が適用されないなどの理由で敗訴。控訴したものの、2026年1月には裁判所の勧めもあり和解に至りました。
和解内容と認められた事実
和解の中で、茶問屋側は以下の事実を認めました:
- 中国の取引先に「宇治抹茶証明書」を交付していたこと
- 茶問屋の関与しないところで、取引先が中国産の抹茶を宇治抹茶のように装って製造販売していたこと
一方で、丸久小山園は約7700万円の損害賠償請求を放棄せざるを得ませんでした。この結果は、国際的な商取引における地理的表示保護の難しさを浮き彫りにしています。
東南アジア市場への浸透
小山社長は、抹茶人気が高まる東南アジア市場でも、中国産の「宇治抹茶」が輸出されていることを確認しています。「既にアジアの一部の国では『宇治抹茶といえば中国産』と思われているところもあるかもしれません。先代たちが必死に守ってきた宇治抹茶の名前がかすめ取られているような気がします」と語り、危機感をあらわにしています。
模倣品の具体例と影響
丸久小山園の人気抹茶「五十鈴」と、中国で売られていたという模造品を比較すると、その類似性は明らかです。包装デザインや商品名の類似は、消費者を混乱させるだけでなく、日本の抹茶産業全体の信用を損なう可能性があります。
世界的な抹茶ブームの陰で、このような模倣品問題が表面化していることは、日本の伝統食品産業が直面する新たな課題を示しています。京都府茶協同組合をはじめとする関係機関も、この問題に注目しており、今後の対応が注目されます。
老舗企業の苦悩と将来への懸念
小山社長は焦りを感じながらも、有効な対抗手段を見つけられないでいます。国際的な商取引の複雑さと、地理的表示保護の法的枠組みの限界が、この問題をさらに困難なものにしています。
この状況は、単に一企業の問題ではなく、日本の伝統的な食品ブランド全体が直面する課題として捉える必要があります。宇治抹茶に限らず、他の地域ブランドも同様のリスクに晒されている可能性があるからです。



