割烹八木、地元愛と継承の味 八木文明さんが紡ぐ茨城・いわきの食文化
調理場で腕を振るう八木文明さん。茨城県いわき市植田町の住宅街にたたずむ「割烹八木」は、平日の昼時から会社員や地域住民で席が埋まり、週末や年末年始には水戸市や都内から常連客が駆け付ける人気店です。店主の八木文明さん(66歳)は、「地域の方たちや常連さんがあってここまで続けられている。本当にありがたいこと」と感謝の言葉を口にします。
妻と二人三脚で切り盛りする人気メニュー
店は妻の奈美さん(63歳)と二人三脚で切り盛りしています。うなぎ料理や天ぷらなどの伝統的な割烹メニューに加え、「常磐もの」を中心に海の幸を盛り込んだ「魚ラーメン」などのオリジナルメニューが客の胃袋をつかみ続けています。3のつく日はそばを、5のつく日はうどんを割引にするなど、庶民的でサービス精神旺盛な姿勢が評判です。
父の夢をかなえる決意と修業の道
茨城県北茨城市出身の文明さんは、高校時代に警察官を志し、柔道や空手に打ち込んでいました。しかし、進路相談の際、自身の店を持つ夢を持ちながら観光ホテルに勤務していた父の生さんが、「おまえは警察官という目標をかなえろ」と涙ながらに話す姿を見て、考えが一変。「これはおやじの本心ではない。代わりに夢をかなえてやりたい」と決意します。
高校卒業後、約25年にわたり都内のさまざまな料理店で修業を重ね、日本料理にとどまらず「どんな料理もこなせるオールラウンドプレーヤーを目指して」と約15店で研さんを積みました。日本調理師会からの依頼で、ハワイやシンガポールなどの日本料理店で講師を務めるほどに腕を上げました。
転機と店の継承、家族の絆
26歳で当時修業していた店で知り合った奈美さんと結婚し、子宝にも恵まれた文明さんは、都内で自分の店を構えるビジョンを描いていました。しかし、父の生さんの二番弟子で、現在の店が立つ場所で「割烹新かつ」を営む平子優さんが病気を患い、店の継続が困難になったことが転機に。
平子さんは生さんと共に都内の文明さんの自宅を訪れ、店を継いでもらえないかと幾度も懇願。当初は断り続けた文明さんでしたが、その情熱に心打たれ、幼少期からの親交もあり、店を継ぐ決意を固めます。30代後半で店名を変えずに新かつを引き継ぎ、1年後に平子さんが死去した後、店名を「八木」に改名しました。その後、生さんも他界し、「平子さんもおやじも安心して旅立ってくれたのかな」と振り返ります。
孫への思いと未来への展望
文明さんには小学5年生の孫がいます。「子どもは3人とも娘で、孫の1人が男の子。将来のことは分からないけれど、もし店を継ぎたいと言ってくれたらうれしいね」と語り、その表情が一瞬和らぎます。文明さんの人柄に引き付けられ、店は今日も一流かつ庶民的な味を求める人たちであふれ返っています。
亀の剥製に込められたメッセージ
店舗入り口付近の壁には2体の亀の剥製が飾られています。開店当時、書道家の綿引逸堂さんが贈ってくれたもので、「(奈美さんと)2人で亀のように、ゆっくりでもいいから堅実に、末永く」との思いが込められています。文明さんはこの言葉を胸に、地元で愛される店を目指し続けています。
店舗情報
- 住所:いわき市植田町本町2の4の18
- 電話:0246・63・6666
- 営業時間:午前11時~午後2時半、午後5時~8時半
- 定休日:月曜日
- 主なメニュー:和風牛ステーキセット(4200円)、うな重セット(4000円)、和風セット(3300円)、まぐろ丼セット(2700円)、おすすめセット(2300円)



