親の病気や死別により困難な状況にある子どもたちの進学を支援する「あしなが育英会」の高校奨学金において、必要な支援を受けられないケースが増加している。近年の物価高騰による生活費の圧迫が原因で、奨学金の申請数が急増しているためだ。2026年度には群馬県内でも30人が申請したが、そのうち7人が不採用となった。
奨学金を受けて学業に励んできた群馬大学医学部4年の鈴木詩さん(22歳、前橋市在住)は、「経済的な理由で夢を諦める子どもたちを減らしたい」と訴え、駅頭での募金活動に立っている。
「支える側になりたい」と街頭募金
4月下旬、JR高崎駅の構内で、鈴木さんが通行人に寄付を呼びかける声が響いた。鈴木さん自身もあしなが育英会の奨学金を受けて進学してきた。5歳の時に父親が難病のパーキンソン病を発症。病状が進行し、十分に働けなくなった。母親が家計を支えるが、「両親の収入を合わせても一般家庭の一人分程度」という厳しい生活が続いている。
高校進学時から奨学金を受給し、大学では一人暮らしの生活費にも充ててきた。「奨学金があったからこそ、アルバイトに追われずに学業や課外活動に集中できた」と振り返る。フィリピンへの留学も経験し、「もっと学びたい」という思いから、将来は臨床検査技師を目指して大学院進学も検討している。
妹も奨学金を受けられず
しかし、支援を必要とするすべての家庭に奨学金が届くわけではない。鈴木さんの4学年下の妹は高校進学時に奨学金を申請したが、不採用となった。
あしなが育英会によると、2026年度の全国の高校奨学金申請数は、制度が始まった1988年度以来最多の1819人に達した。このうち約35%に当たる632人が不採用となった。近年、申請数は1800人前後で高止まりしており、広報渉外課の島田北斗さんは「物価高で遺児家庭や親に障害がある家庭の生活が圧迫されている」と説明する。寄付金を主な財源とする財団の資金には限りがあり、「今後さらに物価が上昇し、すでに苦しい遺児世帯の生活が一層厳しくなることが懸念される」と危惧する。
恩返しの気持ちで活動に参加
鈴木さんは現在、あしなが学生募金事務局のスタッフとして街頭に立っている。大学1年の終わりに参加した奨学生同士の交流会で先輩たちの姿に刺激を受け、「今度は支える側になりたい」と活動に加わった。
「自分よりもさらに厳しい環境にいる子どもたちがいる。夢を諦めずに進学できるよう、少しでも役に立ちたい」。支えられてきた学生は今、募金箱を手に、次の誰かの未来を支えようとしている。



