品川区の再開発計画で住民転出が前提、行政と準備組合の連携が内部文書で暴露
東京都品川区の大崎駅西口における再開発事業において、住民の転出を前提としたオフィスビル建て替え計画が、行政の公式計画に組み込まれていたことが判明した。内部文書の開示により、区と再開発準備組合の緊密な連携が浮き彫りとなり、住民からの批判が高まっている。
マンション再生計画の名の下に進む住民転出
岩崎廣さん(78)は、大崎駅西口の再開発に関する情報を日々収集していた。2021年夏、インターネット検索中に「東京都マンション再生まちづくり制度」のページを発見。品川区が策定し、2018年4月に都の認定を受けたこの計画には、「建物の老朽化や耐震化、居住者の高齢化等の課題が顕在化しつつある」と記され、分譲マンションの建て替え促進が明記されていた。
しかし、実際に計画されているのはマンションではなくオフィスビルの建設である。岩崎さんは、品川区役所を訪れ疑問を投げかけた。区都市開発課の担当者は、「整合性は取れている」と即答し、計画中の「周辺街区への住み替え等も視野に入れた手法や制度の検討、運用を行う」という一文を根拠に示した。
岩崎さんは、この文言が住民の転出を前提とする再開発に行政のお墨付きを与えていることに驚愕。「まるで裏手のマンションに住民を追い出すことを想定して作った計画じゃないか」と憤りを露わにした。
内部文書が明らかにする行政と準備組合の二人三脚
東京新聞の情報公開請求により、品川区が2018年2月に作成した起案書が開示された。そこには、「大崎三丁目(西口F南地区)等先行事業地区との連携による円滑な居住継続(移転)」と明記され、住民転出の構想が具体的に言及されていた。
さらに、添付書類には、区が外郭団体を通じて再開発事業の立ち上げを支援し、2012~2014年度に計900万円の業務委託費を支出していた記述もあった。税制優遇措置を求める働きかけも行われていた。
後日、東京新聞は地元関係者から「要回収」「関係者限り取扱注意」と記された内部文書を入手。2022年8月の打ち合わせ記録「大崎西口駅前地区 品川区定例メモ」には、準備組合がオフィス1棟案の妥当性を区に確認し、区担当者が「周辺街区への住み替え」の一文を根拠に「制度の趣旨とも合致している」と助言していた。
この文書について、準備組合は「回答を差し控えたい」とコメント。一方、品川区は計画作成時に準備組合と調整や情報共有をしていたことを認めた。
制度の趣旨を巡る論争と住民の選択
マンション再生と言いながらオフィスビルへの建て替えが制度の目的に合致するかについて、品川区都市計画課の中道元紀課長は「マンションをマンションに建て替えなきゃいけないとは言っていない」と反論。都マンション課も「違う用途にすることも含め運用の幅は広がっている」と説明した。
しかし、都の推進地区6地区の計画を調べると、「周辺街区への住み替え」を明記していたのは大崎駅西口のみだった。品川区は、オフィス1棟案について「権利者の居住機能の選択肢が広がるなど、マンション再生の目的に整合している」と見解を示した。
2023年に入り、準備組合は住民への個別面談を開始。岩崎さんは「住民を追い出すという筋書きは、品川区と準備組合の合作じゃないか」とあきれ顔で語る。住民たちは、再開発に賛同するか否かの選択を迫られることになった。
この問題は、都市再開発における行政と民間の連携の在り方に疑問を投げかけ、住民の権利と地域の未来を巡る議論を呼び起こしている。



