浜岡原発データ不正、担当者「あり得ない数値を避けたかった」と説明
中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)の再稼働審査を巡る基準地震動(揺れの最大想定)のデータ不正問題で、不正に関与したとされる中部電力原子力部門の担当者が、当初の会社の聞き取りに対し「厳しい条件で試算をした場合に、あり得ない数値になるのを避けたかった」との趣旨の説明をしていたことが、関係者への取材で明らかになった。
南海トラフ巨大地震での懸念
2011年に起きた東京電力福島第1原発事故を教訓に、国は原発に対する規制を厳格化したが、数値が通常考えられる範囲から逸脱するのを回避しようと恣意的に揺れの波形を選んだ可能性がある。2013年に策定された新規制基準の下では、多くの原発で基準地震動の引き上げが必要となった。地震学の知見に限界があることを踏まえて計算結果に一定の数値を上乗せすることも求められ、想定される地震の規模は大きくなる傾向にある。
関係者によると、中部電力の聞き取りに答えた担当者は、南海トラフ巨大地震などの厳しい条件下で浜岡の基準地震動を計算した場合、現実的にあり得ない数値になるのを避けようと考えた可能性がある。中部電力は取材に「事実関係の詳細については、今後の第三者委の調査で明らかにしていただく。当社は当該調査に全面的に協力していく」とコメントした。
地震動を過小評価した動機
中部電力は1月5日、複数算出した波形の中から、平均値に近い波ではないものを意図的に選定し、地震動を過小評価していた疑いがあると公表。同社によると、原子力土建部の数人が関与したとされる。中部電力はこの時の会見で、関与したとされる担当者が会社の聞き取りに対し「地震動を小さくしたかった」という説明のほか「波の形がでこぼこしているのが技術的に好ましくない」「特定の周波数帯で波が大きくなるような波形も好ましくない」などと答えていたと明らかにした。
「時間的な制約があった」「審査への影響を考えた」とも話しており、複数の動機が背景にあった可能性がある。中部電力が問題発覚を受けて設置した第三者委員会に加え、原子力規制委員会(規制委)も中部電力本店への立ち入り検査に乗り出すなど事実関係の解明を進めており、不正に関与した関係者からあらためて聞き取るなど動機も詳しく調べるとみられる。
再稼働審査の行方
浜岡原発は東日本大震災後、政府要請を受け2011年5月に全基が停止。中部電力は2014年に4号機、2015年に3号機の再稼働を申請した。不正の発覚を受け、規制委は再稼働審査を白紙とする方針を明らかにしており、審査再開はめどが立たない状況となっている。
基準地震動とは、原発周辺の地質構造や活断層の状況を調査し、科学的に想定される最大の揺れを定めたもの。原子炉建屋など重要施設は、基準地震動に耐えられる設計が求められている。2013年の新規制基準策定後は厳しい地震の想定が求められるようになり、断層の検討対象を拡大したり、近接する断層の連動を考慮したりするようになった。揺れの大きさは加速度の単位・ガルで示される。