宇宙から海の健康状態を診断する新たな手法が確立
産業技術総合研究所(産総研)を中心とする研究チームが、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載されたセンサーを活用して、浅い海における植物プランクトンの量を推定する革新的な手法を開発しました。この技術は、リゾート開発や工場・都市建設に伴う排水が沿岸域の環境に与える影響を、継続的に監視することを可能にするものとして期待されています。
クロロフィルαの濃度を正確に測定する重要性
クロロフィルαは、植物プランクトンが光合成を行う際に使用する色素であり、海の食物連鎖の基盤を支える重要な要素です。この濃度が過剰になると赤潮を引き起こし、酸素不足を招く恐れがあります。一方で、濃度が低すぎると生態系全体が脆弱化するリスクがあります。特に危険なのは急激な増減であり、同じ地点で繰り返し観測を行う定点観測が不可欠です。
従来の手法では、海の色(可視光)からクロロフィルαの濃度を推定していましたが、沿岸の浅い海域では海底からの反射や河川からの濁りが混在するため、正確な区別が困難でした。
ISSのセンサー「HISUI」による高精度な分析
今回の研究では、ISSの日本実験棟「きぼう」に設置されたセンサー「HISUI」のデータを活用しました。このセンサーは、人間の目で認識できる可視光から、通常は見ることができない赤外線まで、185種類もの異なる波長を識別することが可能です。この多様な波長の分析能力により、浅い海におけるクロロフィルαの濃度を、従来よりもはるかに高い精度で推定できるようになりました。
クロロフィルαの濃度が高い海域では、特定の波長の光が吸収される特性があり、HISUIはこの微妙な変化を捉えることができます。これにより、環境変化の兆候を早期に検知し、適切な対策を講じることが期待されます。
継続的な環境監視への応用と将来展望
この新手法の実用化により、開発行為に伴う排水が海洋生態系に与える影響を、定期的かつ広範囲に監視することが現実的になります。研究チームは、2026年以降の本格的な運用を目指しており、データの蓄積と分析を進めています。
宇宙からの観測技術の進歩は、地球環境の保護において重要な役割を果たす可能性を秘めています。この取り組みは、持続可能な開発と生態系の保全を両立させるための、貴重なツールとなるでしょう。



