量子コンピューターによる化学材料計算が数年で実現へ、富士通と大阪大学が新技術を開発
量子コンピューターを活用した新素材の探索が、あと数年で現実のものとなる可能性が高まっています。富士通と大阪大学の研究チームは、化学材料計算を大幅に効率化する新しいソフトウェア技術を開発しました。この技術により、必要な量子ビット数を従来よりも大幅に削減できるため、実用化に向けた道筋が明らかになりつつあります。
数万量子ビットで計算可能に、2030年頃の実現を目指す
量子コンピューターは、ミクロな世界の物理法則を記述する量子力学を応用した次世代計算機です。従来のコンピューターでは膨大な処理時間を要する複雑な計算も、量子特有の「0と1の重ね合わせ」状態を利用することで、飛躍的に高速化できると期待されています。特に創薬や金融、材料科学など幅広い分野での活用が注目されてきましたが、実用化には100万量子ビット規模の大規模な量子コンピューターが必要とされ、技術的なハードルが高い状況でした。
今回、富士通研究所と大阪大学の共同研究チームが開発したのは、「STARアーキテクチャ」の改良版と、化学材料計算のアルゴリズムを工夫した技術を組み合わせた新手法です。この技術の核心は、量子計算に不可欠な「位相回転」という操作を効率的に実行する点にあります。その結果、計算に必要な量子ビット数や計算時間を大幅に減らすことが可能になり、数万量子ビットの量子コンピューターでも化学材料計算が実行できる見通しが立ちました。
三つの分子で効果を検証、新素材開発の加速に期待
研究チームは、開発した技術の有効性を確認するため、三つの異なる分子を用いた効果検証を実施しました。その結果、従来の手法に比べて必要な量子ビット数が著しく減少し、計算効率が向上することが実証されました。富士通研究所の佐藤信太郎フェローは、新技術で化学材料計算をターゲットにした理由について、「材料科学の分野では、新素材の探索に長い時間とコストがかかることが課題だった。量子コンピューターの高速計算能力を活かすことで、このプロセスを劇的に短縮できる可能性がある」と説明しています。
現在、研究チームは量子コンピューターのマシン本体の開発も並行して進めており、2030年頃をめどに新技術を用いた計算の実現を目指しています。実現すれば、例えば軽量で強度の高い新材料や、エネルギー効率の高い電池材料などの探索が加速し、産業界に大きな革新をもたらすと期待されています。
量子コンピューターの実用化競争は世界的に激化しており、日本発のこの技術が国際的な優位性を築くカギとなるかもしれません。今後の研究進展に、科学界や産業界から熱い視線が注がれています。



