岐阜・飛騨市の縄文石棒が国重要文化財指定へ 学術的価値が高く評価
岐阜県飛騨市宮川町の遺跡から発掘された縄文時代の石棒などが、国重要文化財に指定される見通しとなった。この決定は、同市教育委員会文化振興課の三好清超学芸員(49)が3年間にわたる調査で新事実を明らかにした成果によるものである。
「石棒の価値を飛騨市だけでなく、日本の宝として発信できる」と語る三好学芸員は、愛情を注いできた石棒が学術的に高く評価された喜びをかみしめている。同時に、今後の展望に思いを巡らせている。
挫折から始まった石棒との関わり
三好学芸員と石棒との関わりは、2017年の挫折から始まった。当時、飛騨みやがわ考古民俗館を担当することになった同氏は、気合を入れて石棒の企画展を開催。二つの遺跡から出土した1074本の石棒を全て展示したが、1カ月半の会期中の来場者はわずか950人に留まった。
石棒の数すら下回る来場者数に、三好学芸員は大きなショックを受けたという。富山県境に位置する同館は、来館者の少なさから管理人さえ置けず、予約時のみ開館する状態が続いていた。
攻めのPRで奇跡のV字回復を実現
2019年に主担当となった三好学芸員は、積極的なPR活動を展開。「年間30日しか開かないミュージアム」として発信し、特定の地域に継続的に関わる「関係人口」にも着目。市内外の希少なファンとともに「石棒クラブ」を発足させた。
具体的な取り組みとしては、以下のような活動が行われた。
- 石棒の写真を撮影してインスタグラムに投稿する「一日一石棒」
- 収蔵資料を3Dデータ化する「合宿」
- 同館で管理人が常駐しない「無人開館」の実施
全国で同じような悩みを抱える小規模ミュージアムの未来を描こうと、あの手この手で石棒をPRした結果、来館者数は奇跡的なV字回復を遂げた。
学術的価値の向上と国重文指定への道
誰もが石棒に出合える環境が整うと同時に、三好学芸員が目指したのは、国重要文化財として学術的な価値が認められ、永久的に保存されることだった。2023年、石棒が県の重要考古資料に位置付けられると、すぐに再調査を開始。
異なる時期の二遺跡から未完成の石棒や道具などが見つかっていたため、製作工程に加え、千年間で小型化していく石棒の変遷が明らかになった。これらの研究成果が、国重要文化財指定への大きな後押しとなった。
「石棒はなぜ作られたかいまだ謎に包まれている。将来にわたって保存されれば、僕の代で明らかにするのが難しくても、いつでも謎に迫ることができる」と三好学芸員は語る。国重文の指定を受ければ、未来にわたる保存が義務付けられるため、謎の解明への「第一歩」になると信じている。
地域の宝を守り、伝え続ける決意
一方で、真剣に向き合ってきたからこそ、その謎が人々をひきつけるのだとも感じているという。「自分自身は価値があると信じてきた。国重文に認めてもらえたことで、やってきたことに間違いはなかった」と語る三好学芸員。これからも地域の宝を守り、伝え続けていくと誓った。
現在、国重文に指定される石棒などを展示する「もうひとつの石棒展」が4月22日まで、飛騨市古川町の市美術館で開催されている。4日午前10時と午後1時半からは、学芸員によるギャラリートークも予定されており、月曜日は休館となる。



