平安時代の僧侶の食生活に新たな光
奈良文化財研究所は、平城京(奈良市)にあった寺院の井戸跡から、平安時代のニホンジカや魚の骨片が出土したことを明らかにしました。この発見は、当時の僧侶たちの食生活を具体的に知る上で、極めて貴重な資料となっています。
寺院の井戸から出土した骨片
調査対象となったのは、奈良時代に創建された海龍王寺の境内にあった井戸です。この井戸を埋めた土の中から、複数の骨片が発見されました。土の年代分析から、これらの骨片は平安時代のものと判断されました。
出土したのは、魚の骨片がアジ科やタイ科など計4点、そしてニホンジカの後ろ脚の骨片です。ニホンジカの骨片は最も長いところで約6センチあり、骨製品の制作にはあまり使われない部位であることから、食用として利用された可能性が高いと見られています。
僧侶の肉食禁止と例外規定
平安時代、僧侶が肉を食べることは一般的に禁止されていました。しかし、病気の治療に限っては例外として認められていたという記録が残っています。今回の出土品は、僧侶らが食事の後に廃棄したごみの可能性があり、当時の食習慣を具体的に示す証拠となり得ます。
調査を担当した山崎健環境考古学研究室長は、「平安時代の寺院での食生活が分かる貴重な資料です。魚やニホンジカは当時の一般的な食材でしたが、寺院という特殊な環境での消費実態を明らかにする発見です」と語りました。
過去の出土例との比較
これまでにも、奈良時代に建てられた西大寺(奈良市)の井戸跡から、多くの魚の骨片が出土しています。今回の発見は、平安時代にまで時代を下り、より具体的な食生活の実態を浮き彫りにしました。
これらの成果は、奈良文化財研究所発掘調査報告に掲載され、学術的に高い評価を受けています。出土品の詳細な分析を通じて、平安時代の寺院社会における生活文化や、当時の食習慣に関する理解がさらに深まることが期待されます。



