マウスの再クローニング、58世代目で限界に到達 現在の技術では無限に続けられないことが判明
山梨大学と放射線影響研究所の共同研究チームは、マウスの体細胞から作製したクローンからさらにクローンを作り続ける「再クローニング」を継続した結果、58世代目で限界を迎えたことを明らかにしました。この研究成果は3月24日付で、英国の科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に掲載されました。
自然交配のマウスに比べ突然変異が多く蓄積
研究チームによると、自然交配によって生まれたマウスと比較して、クローンマウスは突然変異が多く発生することが確認されました。さらに、世代を重ねるごとに有害な変異が増加し、最終的には生存が不可能なレベルまで蓄積したと推測されています。
チームを率いる若山照彦・山梨大学教授(発生工学)は、「オリジナルの個体とクローンは遺伝的に完全に同一であるため、再クローニングは理論上無限に続けられると考えられてきました。しかし、今回の研究結果は、現在の技術では限界が存在することを明確に示しています」とコメントしています。
20年間にわたる継続的な実験の経緯
研究チームは2005年に、雌のマウスから採取した体細胞の核を卵子に移植する手法を用いて、29匹のクローンマウス(1世代目)を作製しました。この最初の世代から再クローニングを開始し、約20年間にわたって実験を継続しました。
再クローニングの成功率は、26世代目までは15.5%と上昇傾向を示していましたが、その後は徐々に低下していきました。特に58世代目では成功率が0.6%にまで落ち込み、生まれた5匹すべてが翌日に死亡する結果となりました。
研究が示す技術的限界と今後の展望
この研究は、クローン技術における現在の限界を浮き彫りにするとともに、以下の重要な点を提示しています。
- クローン個体には自然交配個体よりも多くの突然変異が生じる可能性があること
- 世代を重ねるごとに有害な変異が蓄積し、生存率が低下すること
- 現在の技術では再クローニングを無限に継続することは不可能であること
若山教授は、「今回の研究成果は、クローン技術の基礎的理解を深めるだけでなく、将来的な技術革新の必要性も示唆しています。限界を克服するためには、より高度な遺伝子編集技術や細胞工学の発展が不可欠でしょう」と述べています。
この発見は、再生医療や絶滅危惧種の保護など、クローン技術を応用するさまざまな分野において、技術的課題と可能性を再考するきっかけとなることが期待されています。



