EV車載電池を電力需給調整に活用、東京電力HDが分散型エネルギーシステム構築を推進
EV車載電池で電力需給調整、東京電力HDが分散型システム構築

EV車載電池が電力需給調整の鍵に、東京電力HDが分散型システム構築を推進

電気自動車(EV)を購入することは、大容量の蓄電池を個人が保有することを意味します。EVの普及が進み、一人あたりの車載電池保有量が増加した場合、電力供給は十分に確保できるのでしょうか。東京電力ホールディングス(HD)エリアエネルギーイノベーション事業室の中野聡副室長に、車載電池を電力インフラに統合し、需給を制御する技術について詳しく聞きました。

EV普及が分散型エネルギーシステム構築に貢献

東京電力HDは、EVの普及を積極的に推進しています。その狙いの一つは、エネルギーの安定供給です。中野副室長は、大規模発電施設による従来型の電力システムを活かしつつ、小規模エリアで効率的に電力を活用する分散型エネルギーシステムの構築を進めていると説明します。EVが普及することで、膨大な蓄電容量が社会全体に分散配置され、大規模電力に依存せずに需給をコントロールできるようになるためです。

分散型エネルギーシステムの実現には、蓄電池を社会全体に設置する必要があります。国際エネルギー機関(IEA)の報告書によると、世界の全電池需要のうち、車載電池が85%以上を占めており、蓄電池を活用したエネルギーサービスを展開する上で、車載電池の活用が重要視されています。

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自動車メーカーとの連携で電池設計を最適化

具体的な取り組みとして、東京電力HDは自動車メーカーなどとの対話を進めています。自動車メーカーは車載電池を自社グループで開発・生産していますが、安全面や寿命などの仕様を、車載電池と定置用電池の両方の機能において満たす必要があるためです。

従来は、電力会社が望む電池仕様を伝えても前向きな反応が得られなかったものの、最近では「電力供給システム(系統)で活用できるのではないか」との期待が高まっています。耐用期間が過ぎた車載電池は、定置用電池として転用可能です。車載電池の主力であった三元系リチウムイオン電池は、耐用年数を過ぎると劣化して定置用電池として機能せず、リサイクルに回されることが多かったのですが、充放電による劣化が小さいリン酸鉄リチウムイオン電池がEVに搭載されるようになり、自動車メーカーとの協議が進展しています。

EV普及による電力需要増加への対応策

東京電力HDでは、エリアエネルギーイノベーション事業室に約20人の社員を配置し、EV事業を推進しています。業務車両の完全EV化を目指す「EV100」の取り組みや、公共充電サービス事業などを進めています。

国内で利用されている乗用車(ガソリン車)が全てEV化すると、電力需要が増加します。同社では、発電、送電、小売りの各電力事業で収益拡大の機会と捉え、EV普及を推進しています。

夏場など、EV充電の増加が電力供給の不安定化につながらないかとの懸念に対しては、EV普及は時間をかけて徐々に進むと想定されるため、供給量の確保や送配電設備の増強は大きな問題にならないと見ています。EVは、データセンターや猛暑による冷房などの電力需要と異なり、充電する時間を柔軟に変更できます。充電のタイミングを調整し、家庭などでの電力需要が多い夕方ではなく深夜帯に充電することで、ピーク時を避け、電気料金の節約につなげることが可能です。深夜は電力需要が低下し、供給力に余裕があります。

充電のタイミング調整には、テレマティクス技術やスマート充電の仕組みが必要となります。電気料金メニューをセットにしてEV普及を図ることが肝要です。

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車載電池を活用した電力系統への貢献

一方、車載電池を活用することで、電力需要が高まった際に放電し、電力系統に利用することもできます。複数のEVが放電した電力を束ねて電力会社に供給するアグリゲーターと呼ばれる事業者とEVが通信を交わし、適切なタイミングで充電し、必要な時に電力を供給してもらう仕組みです。この技術の実現には、実証実験を重ねる必要があります。

中野聡副室長は、1996年に横浜国立大学を卒業後、東京電力(現・東京電力ホールディングス)に入社。EV事業と蓄電池ビジネスを所管するエリアエネルギーイノベーション事業室の副室長に2024年に就任しました。東京都出身です。