南極観測船しらせが「狂う50度」海域で荒波研究を実施
2026年3月3日、南極観測船しらせは、67次南極地域観測隊を乗せて、南緯50度を越える「狂う50度」と呼ばれる海域を航行中です。この世界屈指の荒れる海で、研究者たちは船舶の安全性向上を目指し、貴重なデータ収集に励んでいます。
東京大学の専門家が艦橋でデータ収集に没頭
東京大学の宝谷英貴さん(船舶海洋工学)は、艦橋に近い第1観測室で、船首のモニター映像や多数の機器を駆使して研究を進めています。船の緯度・経度、波の間隔や高さ、船体の鉄板が波や氷によってどの程度曲げられるかなど、船外に設置したセンサーからのデータが刻々と記録されています。
宝谷さんは波の専門家で、これまでは室内で人工的に波を作る研究が中心でした。風のない実験室では、波が砕けて形を崩す「砕波」を意図的に設計しないと再現が難しく、連続して発生させることはさらに困難です。
「実際の海では、風が吹く中で砕波が当たり前のように起きています。本物の波の力を身をもって体感しています」と、揺れる床に両足を踏ん張りながら語りました。この海域では、何千回かに一度発生する極端な波のデータも収集されており、船舶設計への応用が期待されています。
荒波の中での観測がもたらす科学的価値
南極観測船しらせの船首では、砕けた波が虹を作る光景も観測され、研究の現場は厳しいながらも美しい一面を見せています。このような実海域でのデータは、室内実験では得られない貴重な知見を提供し、気候変動の影響や海洋環境の理解にも役立つとされています。
研究者たちは、荒波による船体への負荷や航行の安定性に関するデータを分析し、将来の船舶技術の向上に貢献することを目指しています。この研究は、南極観測の安全性を高めるだけでなく、広く海事産業の発展にも寄与する可能性があります。



