スモーキングルーム第185回:金ボタンの憂いと軍人たちの饗宴
スモーキーム第185回:金ボタンの憂いと軍人の饗宴 (28.03.2026)

スモーキングルーム第185回:金ボタンの憂いと軍人たちの饗宴

黙り込んだ金ボタンから視線をそらし、煙が立ち上る。ベルボーイの軽やかな靴音が玄関ホールに響き、回転ドアを抜ける談笑が聞こえてくる。夏の日差しが溶けた蜂蜜のような香りの風が、煙の額に落ちた銀髪を揺らした。煙はそれを丁寧になでつけながら、「博士は」とつぶやいた。

博士の孤独な最期と煙の微笑み

「病気が悪化して、もう長くないと覚悟していると手紙に書いてあった。その手紙から数ヶ月、音信はない。博士は生まれ育った街で命を終わらせたかったようだ。でも、街に残っても孤独だったかもしれないね」

金ボタンは煙の表情を見つめた。いつものようなほほ笑みを浮かべていたが、どこか上の空な気がした。それ故に神の使いのように見え、老医師は煙の微笑に看取ってもらいたかったのではないかと、金ボタンは思った。

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軍人たちの豪勢な宴と「金の羊」の秘蔵酒

その晩、軍人たちは大量のワインを「女神の部屋」に持ち込んだ。木箱には、皇帝家ともつながりのあった元貴族のJの紋章が入っていた。「これは!皇帝の『金の羊』の秘蔵酒ですか!」と蝙蝠は目を丸くした。そのJの一族は代々金融業を営んでおり、「富をもたらす金の羊」と呼ばれていた。

「今は我が党の羊だ」と高官の一人が眉をひそめた。「金の羊」の財産は国のものになり、城のような豪邸には党の司令部が置かれ、高位軍人たちが滞在して大型乗用車を乗りまわし、贅沢三昧をしていると言われていた。

蝙蝠の追従と給仕たちの準備

「もちろんでございます!皇帝家など過去の遺物ですからね!」と蝙蝠が手を擦り合わせる。「すぐにご用意致しますね。まずは発泡酒からでしょうか」

給仕の金ボタンたちに忙しない目配せをする。もう有り余るほどのグラスは準備されていた。銀の盆に盛ったフルーツやチーズや生ハムが次々に厨房から運ばれてくる。あとは、軍人たちの指示通りに酒瓶を開封していけばいいだけだ。

この場面は、個人の孤独と政治権力の移行が交錯する瞬間を描いている。煙と金ボタンの会話には、博士の寂しい最期への哀悼がにじみ、一方で軍人たちの宴は、旧体制の崩壊と新たな支配者の奢りを象徴的に示している。蝙蝠の追従ぶりは、権力にすり寄る者たちの姿を諷刺的に映し出している。

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