幻の特産品「三鷹大沢わさび」が復活へ 市と大学が連携し在来種を保全
三鷹市において、江戸時代から1960年代中頃まで栽培され、特産品として親しまれてきた「三鷹大沢わさび」の復活に向けた取り組みが本格化しています。市は今月上旬から、市内にキャンパスを構える国際基督教大学(ICU)との連携を開始しました。2023年以降、キャンパス内に残されていたワサビ田を整備し、この春、見事に収穫を実現させたのです。
江戸時代に始まった歴史ある栽培
三鷹大沢わさびの栽培は、同市大沢で江戸時代後期の文政年間(1818~30年)に始まりました。この地域は多摩川が武蔵野台地を浸食して形成された「国分寺崖線」の湧き水が豊富で、ワサビの栽培に最適な環境を備えていました。
当時の江戸でにぎりずしブームが起きると、小ぶりながらも味と香りが優れていると評判となり、三鷹を代表する名産品として広く知られるようになりました。しかし戦後、周辺地域の宅地化が進んだことなどが原因で、1960年代中頃までにほとんど生産されなくなってしまいました。
10年前から始まった復活への道のり
市が「幻のワサビ」の復活に本格的に取り組み始めたのは、およそ10年前からです。2007年に敷地内にワサビ田のある古民家の寄贈を受け、2018年の古民家公開に向けて整備を進めていた際、敷地内にわずかに自生している株を発見しました。調査の結果、これが大沢地域にしか残っていない貴重な在来種であることが判明したのです。
こうした活動が進む中、敷地内に国分寺崖線が通るICUのキャンパスでも2023年、かつて使われていたとみられるワサビ田が発見されました。環境学や土壌学を専門とする藤沼良典教授と学生たちは、雑草に覆われていたワサビ田を段々畑状に整備し、2024年春には市から提供された培養苗を1000株植え付けました。
学生団体による認知度向上活動
ICUでは昨年、三鷹大沢わさびの認知度向上を目指す学生団体が発足しました。市民を対象としたワサビ田のツアーや、ワサビを通じて自然環境などを学ぶ「わさび学会」を企画しています。ワサビ田では、有害なモンシロチョウの卵を葉から一つ一つ丁寧に取り除く地道な作業を重ね、青々としたワサビを生育させてきました。
藤沼教授は「自然の不思議を身をもって学べる場所として、今後も活用していきたい」と語っています。学生たちの熱心な取り組みが、貴重な在来種の保全に大きく貢献しているのです。
市と大学が覚書を締結
市とICUは今月上旬、ワサビの保全や活用に関する覚書を正式に締結しました。これにより、市はICUに苗を提供し、学生らとともにワサビ田を自由に使用することが可能になりました。収穫したワサビは市とICUで等分し、それぞれが活用していくことになっています。
市は古民家の敷地に整備したワサビ田でも栽培を継続しており、今後は市内の飲食店で市民が味わえる機会を計画しています。担当者は「三鷹大沢わさびの存在や魅力をより広く伝えていきたい」と意気込んでいます。
この取り組みは、単なる特産品の復活にとどまらず、地域の歴史や文化、自然環境の保全にもつながる重要な活動として注目を集めています。幻のワサビが再び三鷹の名産として蘇る日が、今から楽しみです。



