愛知県内全駅の駅名標を制覇した12歳少年の6年間の挑戦
愛知県春日井市に住む吉田凜太郎さん(12)は、鉄道駅のホームに設置されている駅名看板「駅名標」の撮影を趣味としている。今年2月までの約6年間で、県内すべての鉄道・地下鉄駅を訪れ、約490枚の駅名標写真を収集し、路線ごとにファイルに整理した。今月、地元の松山小学校を卒業したばかりの凜太郎さんは、「中学に入っても続けて、東海地方の全駅を制覇したい」と意気込んでいる。
数字への興味がきっかけで始まった駅名標収集
幼い頃から数字が大好きだった凜太郎さんが駅名標に興味を持ったのは、小学1年生の時のことだ。母親の貴子さん(55)によると、JR中央線で春日井市の愛岐トンネル群を訪れた際、最寄りの定光寺駅の駅名標に記された「駅ナンバリング」と呼ばれる記号を見て、「何だろう」と関心を持ったという。駅ナンバリングは、路線記号のローマ字と駅番号の数字を組み合わせた記号で、日本語が理解できない訪日客などにとって乗降時の助けとなっている。
この経験をきっかけに、凜太郎さんは県内すべての駅名標を写真に収め、路線ごとに並べることが目標になった。月に1、2回のペースで貴子さんと撮影に出かけ、JRをはじめ名鉄や近鉄、名古屋市営地下鉄、愛知環状鉄道、リニモまで、あらゆる駅を鉄道を利用して訪問した。
撮影の苦労と達成感
駅名標の撮影は簡単なものではなかった。ホームに降りて撮影するため、次の電車まで2、3時間待つこともあったという。体力がついた最近では、1、2駅先まで歩くこともあった。新型コロナウイルス禍で一時中断した時期もあったが、小学3年生の時には米原-熱海の東海道線の84駅を制覇するなど、県内や東海地方を中心に撮影を進めてきた。
貴子さんは、「撮影に集中するあまり、車内に財布やスマホを忘れたこともあった」と語る。それでも、凜太郎さんは「駅や車両にはあまり興味がない」と話し、駅ナンバリングに特化した撮影を続けてきた。駅近くの遊園地や観光地に行ったことはほとんどないという。
「県内駅制覇」を達成し、新たな目標へ
「県内駅制覇」で最後に残ったのは、JR豊橋駅から長野県方面に向かう飯田線の愛知県区間だった。先月、東栄駅までを撮り終え、ついに目標を達成した。路線ごとにファイルを用意し、駅番号に従って整理した結果、県外も含め撮影した駅は680駅を超え、ファイルは14冊に上る。「そろったのを見ると達成感がある」と凜太郎さんは笑顔を見せる。
最近では、ユニークなデザインの駅舎や車両を撮るなど、少しずつ興味が広がってきた。駅を起点に周辺を散策する「JRさわやかウォーキング」に貴子さんと参加するようになったのも、その一環だ。
中学進学後も続ける趣味と家族の絆
4月に地元の西部中学校に進学してからも、活動を続けるつもりだ。ただし、「一人はいや。友達と行くかな」と話し、小学校時代のように母親が付き添う形から変化を考えている。貴子さんは、「大変なこともあったけど、息子と一緒に過ごす時間はこれから少なくなる。たまには一緒に行きたい」と語り、家族の絆を深める機会にもなったことを振り返る。
鉄道ファンの間では、駅名標に注目した活動は「もじ鉄」と呼ばれる。駅の名前そのものや運行会社、路線によって異なるデザイン・書体などを味わう人が多いが、凜太郎さんはあくまで駅ナンバリングにこだわった。その独自の視点が、6年間の継続的な取り組みを支えてきたと言えるだろう。



