江戸の吟味方と例繰方の駒井親子、武器密造事件の吟味過程に光を当てる
江戸の吟味方と例繰方の駒井親子、武器密造事件の吟味過程

江戸の吟味方と例繰方の駒井親子、武器密造事件の吟味過程に光を当てる

深見ののどかな口調に釣られ、惣十郎の気負いも自然と凪いでいった。深見は、武器密造事件の吟味方について語り始める。

吟味方の駒井と例繰方の駒井

「主に手綱を引いていた吟味方与力の名もわかりませんか」と惣十郎が尋ねると、深見は慎重に答えた。「手綱を引いていたというのがふさわしいかどうか……駒井様が指図して、若手の与力を用いたと聞いています。とはいえ、廻方の河本様が確かな証拠を示したことが決め手となり、擬律に照らして武器密造の件は例外なく入牢させるとの申し送りも例繰方からございましたので、吟味はさほど手間取らなかったかと記憶してございます」。

淀みない深見の語りを聞きながら、惣十郎は顎をさすった。吟味方の駒井という名が頭に浮かぶ。崎岡が以前、得意げに語っていた話を思い出す。例繰方の駒井伴之輔の父は、吟味方与力だったという。父を継ぐべく、駒井は吟味方への役替を望んでいるが、なかなか叶わずいらついている、と。駒井という初老の与力がいたのは、惣十郎にも覚えがある。

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「俺は駒井様と係り合ったことはないんだが、確か、もうお辞めになりましたね」と惣十郎が訊くと、深見より先に三好が答えた。「天保十一年の暮れに致仕しておりますね。ですので、この年はおそらく、じかに吟味をなさるというよりは後進の指導役として勤めておられたかと存じます」。隣の深見も、三好の言に頷いている。

例繰方の駒井の役割

「ちなみに、お白洲の吟味では例繰方与力も同席したはずですが、これはどなたが」と惣十郎が尋ねると、深見が答えた。「駒井様にございます。あ、吟味方の駒井様のご令息で、今も例繰方におられる……」。なるほど。あのいい加減な口書を仕上げたのは、例繰方の駒井なのだ。

――ろくに仕事もできねぇのに、威張り散らすのだけは一人前か。惣十郎は、鼻から大きく息を抜く。

「例繰方の駒井様に一件を任せたのは、吟味方の駒井様のご指示でしたか」と惣十郎が尋ねると、深見は歯切れの悪い答えを返した。「さぁ、そこはなんとも。吟味方が例繰方の人事にまで口を出せるとも思えませんが」。これに反し、三好があっけらかんと言った。「いや、きっとお父上の差配ですよ。なにしろあの駒井様ですよ。みなさん、なるべく仕事を回さないようになすってるじゃないですか」。

この会話から、江戸時代の役人社会における親子の関係や、事件処理における吟味方と例繰方の役割分担が浮き彫りになる。武器密造事件の吟味過程は、証拠の提示と擬律に基づく入牢の決定が中心であり、吟味方の駒井が後進を指導する立場にあったことが示唆される。一方、例繰方の駒井は、父の影響下で仕事を任されていた可能性が高い。役人たちの人間関係や仕事への姿勢が、事件の処理に影を落としている様子が窺える。

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