舞台の中央に置かれたチェロにスポットライトが当たり、深く豊かな音色がホールに響き渡った。リアル・サウンド・ビューイングという最新技術を駆使して再生されたのは、3年前に白血病でこの世を去った若きチェリストの演奏だった。
病室で知ったチェリストの存在
私がこのチェリストの存在を知ったのは、昨年7月のこと。同じ白血病で入院していた病室のテレビで、彼のニュースが流れたのがきっかけだった。ニュースでは、彼の両親が生前の彼の願い——病院に防音室を寄付したい——を実現するためにチャリティー活動をしていることが伝えられていた。
当時、私は4回目の抗がん剤治療の真っ最中。弱り切った体でベッドに横たわりながら、「もし無事に退院できたら、この活動を支援しよう。そして、必ずメモリアルコンサートにも行こう」と心に誓った。
退院から半年、念願のコンサートへ
退院から約半年。体力も徐々に回復し、4月のある日、私は娘と一緒に念願のメモリアルコンサートに足を運ぶことができた。
スクリーンに映し出された若きチェリストの映像と、チェロから紡ぎ出される深く優しい音色。その瞬間、涙が止まらなかった。必死にこらえようとしたが、頬を伝う涙を拭うことも忘れてしまった。
娘の一言に思わず苦笑
コンサートが終わり、帰り道、隣に座っていた娘がこんなことを言った。「お母さん、体震えてたよね。最初、地震の振動かと思ったよ」。その言葉に思わず苦笑い。もし周りに人がいなければ、声を上げて泣いていたかもしれない。
生き続ける音色
旅立った若きチェリストの音色は、今もなお生き生きと響き続けている。彼の演奏は会場中をその美しい響きで満たし、聴く者の心に深く刻まれた。彼の遺志を受け継ぎ、病院に防音室が設置される日もそう遠くないだろう。
私自身も、この経験を胸に、これからも前を向いて歩んでいきたい。



