旧日本兵の「戦争トラウマ」、公の場で初めて展示 しょうけい館で心の傷の実態伝える
旧日本兵の戦争トラウマ、初の常設展示 しょうけい館で実態伝える

旧日本兵の「心の傷」、公の場で初めて展示 しょうけい館で戦争トラウマの実態を伝える

旧日本軍兵士の負傷体験などを収集・展示する国の戦傷病者史料館「しょうけい館」(東京都千代田区)が、兵士らの精神疾患の実態を伝える常設展示を開始した。戦争による心の傷に苦しんだ旧日本兵を家族に持つ市民グループが、長年にわたりその存在を公に周知するよう国に求めてきたが、ついにその願いが実現した形だ。2026年2月26日、展示を確認した関係者らは「ようやくここまできた」と感慨を語った。

「心の傷による労苦」と題したパネル展示

同館3階に新設されたのは、「心の傷による労苦」と題したパネル展示である。過酷な戦場体験によって、現在のPTSD(心的外傷後ストレス障害)に該当する事例が含まれていた可能性があると紹介。日本軍は専門の治療機関を整備しながらも、表向きにはそのような将兵は存在しないとしてきた歴史的背景にも言及している。

展示では、パネルの前に設置されたデジタル端末を活用し、患者の症状の変遷や体験記を読むことも可能。戦地の野戦病院をリアルに再現した展示などは従来もあったが、心の病に焦点を当てた展示はほとんどなかったと関係者は指摘する。

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家族らの長年の働きかけが実る

26日に展示を訪れたのは、「PTSDの日本兵家族会・寄り添う市民の会」の黒井秋夫代表(77)=東京都武蔵村山市=らメンバー5人。中国から復員した元兵士の父を持つ黒井さんは、父が無口で定職に就かず、その理由に思い至らなかった過去を振り返る。

戦争PTSDの存在を知り、同様の体験を持つ旧日本兵の家族が話し合える場を2018年に設置。国に実態を周知するよう訴え続け、昨夏には期間限定の企画展も同館で開催された。黒井さんは次のように語った。

「『皇軍には心に傷を負うような兵士は一人もいない』『日本男児は強いんだ』と言ってきた国が、体の傷だけでなく心にも傷を負うんだと公の展示で認めたことは大きな一歩だ」

さらなる資料充実と啓発強化を期待

現状の常設展示は、パネル一枚と2台のデジタル端末のみ。黒井さんは「家族には体験談があり、映像や本を出している人もいる」として、さらなる資料の充実と啓発の強化を望んでいる。差別や偏見を恐れて実態を語れない家族も多いため、国には実態を把握し対策を講じることも求めている。

戦争トラウマの歴史的背景

戦争トラウマは、太平洋戦争などの過酷な戦場体験で負う心の傷を指す。戦時中、国は国府台陸軍病院(千葉県)など専門の医療施設で患者を受け入れ治療に当たったが、戦後の1962年の抽出調査では、退院者の25%にノイローゼやアルコール依存などの症状が確認された。

発症した旧軍人や軍属に療養費を支給する「戦傷病者特別援護法」が1963年に制定され、受給者はピーク時の1978年度で1107人に上った。2021年に最後の支給対象者が亡くなったが、精神疾患への差別や偏見を恐れて名乗り出られなかった家族も多く、患者数の正確な把握は困難とされている。

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