シニアの人生経験を演劇に 細見佳代さんが高齢者の生きがい創出を実践
シニアの人生経験を演劇に 細見佳代さんが実践

シニアの人生経験を演劇に昇華 細見佳代さんの挑戦

一般社団法人「ART&HEALTHきょうと」(京都市)の代表理事を務める細見佳代さん(52)は、高齢者が自身の人生経験を基にした劇を創作し、舞台で演じることで、生きがいや社会とのつながりを創出するケアを実践しています。この取り組みは、老いへの不安を抱えるシニア世代に新たな光をもたらすものとして注目を集めています。

唯一無二の物語を作品に

「若い頃のように体が動かない」「できないことが増えた」といった高齢者からの声は少なくありません。しかし、細見さんは、困難を生き抜いてきた「私の物語」こそが唯一無二の大切なものだと強調します。その物語を演劇として表現し、人生の喜びや苦しみを分かち合うことが、この活動の核心的な目的です。

活動には二つの柱があります。一つは、高齢者にこれまでの暮らしや仕事を語り合ってもらい、本などの作品にまとめるプロジェクト。もう一つは「50歳からのハローシアター」と称し、シニア世代自らが舞台に立つ演劇プログラムです。参加者からは「苦労はしたが、良い人生だと思えるようになった」といった声が上がり、自尊心の向上につながっています。

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異世代交流と病気との向き合い

さらに、若者が高齢者に思い出を聴き取ったり、一緒に演劇を体験したりする異世代交流にも力を入れています。これにより、若い世代が生きるための知恵を学べる場を提供し、世代間の理解を深めています。

例えば、2026年4月12日にハートピア京都で上演予定の作品「飛べ! ポンコツロボット」では、パーキンソン病を抱える68歳の女性が原作を手がけ、出演します。主人公は家事で失敗ばかりするロボットに自身を重ね、家族と衝突しながらも前を向く姿を描きます。「私はまだ諦めたくない」というセリフは、女性の心の叫びそのものです。出演者にはがんで闘病した人も含まれ、「病をどう受け入れたらいいのか」を全員で話し合いながら創作を進めました。

父の影響と活動の広がり

細見さんの活動の原点には、先天性の脳性まひだった父の存在があります。父は不自由な体で生きる思いを詩にし、新聞や専門誌に投稿していました。中学生の時にその詩を読んだ細見さんは、世間から「障害者」と見られる父の内面を初めて知り、衝撃を受けました。

自身も俳優として活動する細見さんは、「高齢者」や「要介護者」といった枠ではなく、個人の個性や本質を演劇で表現することを考えるようになりました。40歳で社会福祉士の資格を取得し、高齢者団体や施設、社会福祉協議会の協力を得て活動を拡大。近年は大阪や仙台でも演劇ワークショップや上演を行っています。

2025年には、英スコットランドのシニア劇団をハローシアターのメンバーと訪問し、「年をとることを祝う」イベントで共演。高齢者の創作活動を支援する非営利団体を視察し、アートと福祉の連携が進んでいることを実感しました。

社会全体でのケアを目指して

細見さんは、日本でも多様なアートが医療や福祉と連携し、支援を求める人々を包み込む仕組みを作りたいと語ります。老いや病と向き合いながら豊かに生きていくためのケアを、社会全体で考えていくことが重要だと訴えています。

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一般社団法人「ART&HEALTHきょうと」は、2007年から京都を拠点に活動し、2025年5月に法人化。アートの力で高齢者や障害のある人が自己表現できる場を提供し、会員20人で運営されています。演劇プロジェクト「50歳からのハローシアター」では、演劇や朗読劇の講座開催、作品上演などを各地で実施。また、高齢者が思い出を語って心を安定させる「回想法」に演劇的手法を取り入れ、福祉施設などでプログラムを展開しています。