新国立劇場・上村聡史新監督が4つの視点を掲げ、物語のアップデートを目指す
新国立劇場・上村聡史新監督が物語のアップデートを宣言

新国立劇場・上村聡史新監督が4つの視点を掲げ、物語のアップデートを目指す

2026年9月から新国立劇場の演劇芸術監督に就任する上村聡史(46歳)が、16日に自ら編成した2026/2027シーズンのラインアップを発表しました。文学座出身の上村氏は、2005年に同劇場の舞台制作に演出助手として初めて携わり、以来「オレステイア」(2019年)や「白衛軍」(2024年)など数々の作品を演出してきました。

説明会で上村氏は、「芸術監督諸先輩の仕事を近くで拝見してきた」と述べ、先人を手本にしつつも、「時代の変化の中で、物語のアップデートを目指していきたい」と決意を語りました。この発言は、新監督の革新的なアプローチを示すものとして注目を集めています。

4つの視点で現代演劇を再定義

上村氏が掲げたのは、以下の四つの視点です。

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  1. 現代的、国際的、批評的:現代社会の課題を国際的な視点から批評的に捉えることを目指します。
  2. クロスオーバー、他ジャンルとのつながり:演劇と他の芸術ジャンルとの融合を促進し、新たな表現を探求します。
  3. 新しい才能との出会い:若手劇作家や出演者を積極的に発掘し、創作の場を広げます。
  4. 消費で終わらないパフォーマンス:観客が単に消費するだけでなく、深く考えさせる舞台を提供します。

まず、11月の開幕作品として、20世紀ロシア文学の傑作「巨匠とマルガリータ」が選ばれました。上村氏はこの作品について、「過去に敬意を払い、今の視点で語り、未来につなげる」という自身の指針に重なると説明しています。

具体的なプログラムと挑戦

特に強く打ち出されたのが、最初の視点「現代的、国際的、批評的」です。2027年3月から6月にかけて、排他主義を風刺した「ナハトラント~ずっと夜の国~」、世界経済から見た分断を描く「見えざる手」、男性至上主義を問う「Ruined 奪われて」の翻訳劇3本と、生と死の選択がテーマの「抱擁」(山田佳奈作・演出)を連続上演します。

クロスオーバーを目指して、2026年12月にはダンサーでもあるスズキ拓朗演出の「ミノタウロスの皿」を上演。新しい才能との出会いでは、劇作家や出演者を公募して集団創作を行う試みを始めます。また、消費で終わらないパフォーマンスとして、2027年7月に「エンジェルス・イン・アメリカ」を4年ぶりに再演し、過去作の舞台美術を一部再利用する計画です。

発表された上演作7本のうち、翻訳劇は5本を占め、現代世界について多くの気づきを得られるラインアップとなっています。

国立劇場の役割への問いかけ

しかし、注目すべきは発表の最後に上村氏が提起した命題です。日本で現代演劇を創造する国立劇場の役割について問いかけました。上村氏は、「議論の尽きない問題。制作チーム、財団各部署との対話を重ね、お客様の感覚、社会の現状を偏りのない目線で捉え、芸術監督である己の感性を厳しく問い詰めながら命題と向き合ってプログラムを作っていく」と語りました。

自身の考えを記者に問われると、「今の段階ではわかりません」と意外な答えを返し、さらに「対話しながら可能性を広げることが国立劇場の役割ではないかと思う。定義付けした段階でつまらなくなる不安がある」と述べました。白紙の状態から答えを模索していく姿勢が、上村流のアプローチと言えるでしょう。

来年、新国立劇場は開場30周年を迎えます。新監督のイニシアチブにより、議論と対話が活性化し、現代演劇の新たな可能性が拓かれることが期待されます。

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