ブロッコリー農家が地毛まげで武士に変身 松江武者行列の精鋭部隊長
松江開府の祖である堀尾吉晴公の松江城入城を再現する「松江武者行列」が4月4日、松江市内で開催される。武者や侍女に扮した市民らが繰り広げる時代絵巻は、仲春の風物詩として定着している。勇壮に練り歩く参加者の中には、地毛でまげを結った武士さながらの男性がおり、注目を集めている。
普段はブロッコリー農家 戦国愛が高じてまげ姿に
「エイ、ヤー」。2月中旬、島根県松江市内の小学校体育館に威勢の良い声が響いた。柄が赤色の槍を手にし、約10人の男女が構え方や突きの練習を繰り返し行っていた。その中に、まげ姿の男性がいた。指導役の山根俊明さん(39)だ。
本業は生産農家。普段は地元の鳥取県大山町で特産の「大山ブロッコリー」を作り、同県米子市の国史跡「米子城跡」の魅力を発信する「米子城武者隊」のメンバーとしても活動している。
学生時代から戦国武将や大相撲が好きで、まげには興味があった。モヒカンやスキンヘッドにも変えた経験がある髪形を、「興味本位で、まげを結いたくなった」と2017年の2月頃から髪を伸ばし始めた。1年かけて長さが20センチほどになった頃、美容院で頭頂部をそってもらい、ざんばら頭に。「何それって、家族はあきれていました」と笑う。
インターネットで独学 まげの結い方を習得
「鬢付け油を髪の毛全体になじませてくしを通してから、組み紐とゴムでまげを結う」――。まげの結い方は、インターネットで調べた。数日に1回、伸びた髪や頭頂部の手入れは必要だが、「普段の生活に支障は全くない」と笑い飛ばす。
まげ姿で過ごす生活に、戦国武将への関心は日々高まり、模造刀をそろえたほか、映画やドラマなどの時代劇にも没頭した。そんな中、18年に松江武者行列のことを人づてに聞き、「どうしようもなく、胸が高鳴った」。オーディションに合格し、19年には吉晴公の次男役に抜てきされた。
精鋭部隊「赤備武者隊」の隊長として槍術を指導
23年からは主催者側の薦めで、武者行列の先頭付近を歩く精鋭部隊「赤備武者隊」の隊長を務めている。本物さながらの部隊を構成するため、本などで槍術を学んで武術を盛り込み、「演舞」よりも「演武」の要素を多く取り入れた。
ただ、2メートルを超える槍を扱う際には危険が伴うため、個人練習などの機会を重ね、手取り足取り丁寧に指導している。松江武者行列や米子城武者隊の活動を通じ、交友の輪も広がった。
「まげを落とすときは、武士を終える時」
「まげを落とすときは、武士を終える時」と語るほどで、「自分のまげ姿は気に入っている。本物の武士にはなれないが、いつか吉晴公を演じたい」。めがねの奥の目はギラギラと輝いていた。
山根さんは、ブロッコリー農家としての日常と武士としての活動を両立させながら、戦国時代への熱い思いを胸に、松江武者行列の成功に向けて尽力している。地毛まげという独自のスタイルが、歴史再現イベントに新たな風を吹き込んでいる。



