桜守・佐野藤右衛門氏の形見「京姫」が京都府立植物園で開花間近、匠の思い継ぐ
桜守の形見「京姫」開花間近、京都で匠の思い継ぐ

桜守の形見「京姫」が京都府立植物園で開花を控える

昨年10月に97歳で亡くなった造園家・16代佐野藤右衛門氏が育てた形見の桜が、京都市左京区の京都府立植物園で薄紅色のつぼみを膨らませ、開花が間近に迫っている。この桜は、佐野氏の遺言により寄贈された変異種で、自ら「京姫(けい)」と命名していた。佐野氏以外は花を見たことがなく、植物園の担当者は「桜守の思いを受け継いでいきたい」と開花を待ち望んでいる。

匠の生涯と桜への情熱

佐野氏は京都市出身で、1832年創業の「植藤(現・植藤造園)」の16代目を襲名。円山公園の名桜「祇園しだれ」の世話や、仁和寺の「御室桜」の保全、京都迎賓館の作庭を手がけた。全国的な桜の調査・保存活動に尽力し、東日本大震災の被災地では、高台避難の目印になる植樹にも積極的に関わった。

京姫の誕生と特徴

植物園の職員で樹木医の中井貞氏(55)によると、京姫は佐野氏が10年ほど前、自宅の育成用の畑で見つけた自然交配の突然変異種。最後まで手元に置いて大事に育てており、咲いた花は佐野氏しか見ていないという。今年2月、遺言に従って植物園に植樹された。京姫の高さは2.5メートルで、生育は順調。親にあたる品種は、開花時に葉が伴うヤマザクラ由来の「佐野桜」と、大ぶりで香り高い「桐ヶ谷(きりがや)」と推定され、淡いピンクの八重咲きになることが期待されている。

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西陣織の帯額と匠の思い

佐野氏は2024年、植物園の開園100周年記念に、京姫をモチーフに自ら図案を考案した西陣織の帯を装飾用に仕立てた帯額「大堰川(おおいがわ)」を寄贈した。この際、「花は八重で重厚さを表現」「白、桃色に」「シベはぎっしりと繊細に」と細かく特徴を指示。体調を崩していたため手渡しできなかったが、園長宛ての手紙で、祖父や父と親交があった植物学者・牧野富太郎の言葉を引用し、「変種とわかれば、植物園で保護育成してもらえと言われた」との思いをつづった。

継承される桜守の遺志

中井氏は「京の桜の系譜を守るよう託された気がする」と語り、植樹後の水の管理などに気を配っている。早ければ今月中に開花する見込み。植藤造園社長で長男の晋一氏(68)は「父は常々、『京都近郊にはヤマザクラの交配種で見たこともない花があるはずだ』と話していた。京都ゆかりの桜を多くの人に見てもらえたら」と期待を寄せた。

京姫は植物園の北山門近くにある「桜品種見本園」に植えられており、入園者は誰でも見学できる。桜守の匠が遺した形見の桜が、新たな春を告げようとしている。

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