今季の欧州クラブ王者を決めるチャンピオンズリーグ(CL)の決勝が30日(日本時間31日未明)、ハンガリーの首都ブダペストで開催される。決勝の舞台に立つのは、昨季覇者のパリ・サンジェルマン(PSG、フランス)と、初優勝を狙うアーセナル(イングランド)。世界をリードしたバルセロナ(スペイン)流のパスサッカーを英仏で独自に発展させた、「ポストモダン」な両雄が激突する。
両指揮官の共通点
ワールドカップ(W杯)北中米3か国大会に出場を予定するスター選手らを率いるのは、PSGのルイスエンリケ監督(56)とアーセナルのアルテタ監督(44)。2人には、共通点が主に二つある。勤勉さや規律を重視するスペイン北部の大西洋岸で生まれ育ったことと、バルセロナ流の影響を強く受けていることだ。
ルイスエンリケ監督は、アストゥリアス州ヒホンの出身。バルセロナで選手、監督として実績を上げ、バルサでもCL制覇に導いている。バスク自治州サンセバスチャンで育ったアルテタ監督は10代の頃、将来性を買われて地中海岸に移り、バルセロナの育成組織に入った。元J1神戸のイニエスタ氏らと腕を磨き、バルセロナ時代のルイスエンリケ、アルテタ両監督は、親善試合で同じピッチに立ったこともあるという。
今季までマンチェスター・シティー(マンC、イングランド)を率い、今世紀のバルセロナ黄金期を築いた知将グアルディオラ氏とも関わりの深い2人だが、ともに今のチームには自己流のアレンジを加えている。
PSGの特徴
PSGの大きな特徴は、モロッコ代表のDFハキミが右サイドバックの位置を飛び出して相手ゴール左にまで進出するような流動性の高さと、FW陣が相手選手を追い回す激しいプレスだ。グアルディオラ氏の後にバルセロナを率い、欧州CLを制したルイスエンリケ氏は、「走らない選手に居場所はない」と公言する。前回W杯でスペイン代表を率いた熱血漢は昨季、独善的なプレーをする選手もいたPSGを鍛え直し、今季はさらに完成度を高めて2季連続でCL決勝に進んだ。
アーセナルの戦術
一方のアーセナルで要になっているのは、アメリカンフットボールに学んだというきめ細かいセットプレーと、局地戦で競り負けないよう仏代表DFサリバら屈強な選手を複数起用する点だろう。以前、マンCでコーチを務めたアルテタ氏は「マンCのやり方をコピペすることは決してないし、ここでは機能しないだろう」と言い、自らの采配を貫いてきた。今季は、ついにイングランド・プレミアリーグを制し、CLとの2冠に王手をかけている。
決戦の地と展望
すでに多くのサポーターが集まっている決戦の地ブダペストは、熱波が襲うロンドンやパリと違い、30日は25度程度の最高気温が予想される。ともに負傷を抱える主力選手もほぼ試合には出られる状態といい、好ゲームが期待できそうだ。
29日の前日記者会見で、ルイスエンリケ監督は、「細部にこだわって試合を進めないといけない。2季連続のCL決勝で、勝ちたい意欲は(昨季より)さらに強くなっている」と説明。アルテタ監督は「PSGは(前回王者として)トロフィーを守りにここにいる。我々は、彼らから奪い取るためにここに来た」と意欲を語った。
ティキタカと呼ばれたバルセロナ流の華麗なパスサッカーと、ドイツやオーストリアから広まった極端なまでのプレス戦術の流行が一区切りついた今。次代のスタイルを提示するようなハイレベルの戦いの末、トロフィーを掲げるのは、どちらだろうか。(ブダペスト 平地一紀)



