鹿島アントラーズのクラブハウス移転問題、鹿嶋市と潮来市が激しく対立
サッカーJ1の鹿島アントラーズが、老朽化したクラブハウスを鹿嶋市から潮来市に移転する検討を開始すると発表したことを受け、両市の間で激しい対立が生じている。田口伸一鹿嶋市長は「正式な説明がなく、賛成できない」と強く反発する一方、移転先の原浩道潮来市長は「段階を踏んで説明してきた」と反論しており、双方の主張が真っ向から対立している。背景には、経済的影響への懸念や防災面での課題が複雑に絡み合っている。
両市長の主張が真っ向から対立
クラブと潮来市が4月22日に移転検討開始を発表すると、田口市長は即座に「強い憤りを覚える。撤回を求める」と反対を表明。5月下旬には報道陣に対し、自身の主張を詳細に説明した。
市長によると、クラブから移転に関する初めての言及があったのは2022年10月の内部会議。新スタジアム構想の話を進める中で「クラブハウスについては潮来市で調査したい」と伝えられ、「調査ならやむを得ない」と受け止めたという。しかし、今年2月のクラブ取締役会で移転検討開始の決定について正式に報告を受けた際、「移転案に関して、クラブから事前に説明はなかった」と怒りをあらわにした。さらに、「移転候補地は洪水ハザードマップで浸水想定区域になっている」と指摘し、防災面での懸念も示した。
一方、潮来市の原市長は、2025年7月に移転関連の提案書を鹿嶋市側と共有するなど、事前に説明を行ってきたと主張。「クラブや鹿嶋市には、段階を踏んで説明してきた」と語り、田口市長の主張を否定する。浸水想定区域の指摘については、「埋め立て地ではないので液状化などのリスクは低く、土地のかさ上げなどで災害対応は可能だ」との認識を示し、問題はないとしている。
地域経済への影響を懸念
6月の鹿嶋市議会では、移転の経済的影響について市議から質問が上がり、市幹部が「試合日以外も練習見学などで大勢が訪れており、地域経済に大きな影響を及ぼす」と回答した。クラブハウスと一体の練習場では、シーズン中に週1度ほど練習が公開され、多い日には300人が訪れる。選手がサインや記念撮影に応じるなど、サポーターにとっては心躍るイベントの一つであり、地域経済にも大きな影響を与えている。
影響は周辺地域にも及んでいる。鹿島神宮付近で飲食店を営む女性は「公開練習を見た後に来てくれるお客さんも多い。移転されたら困る」と不安を語る。鹿島神宮前の飲食店経営者も「お客さんが減るかもしれないので移転は反対。市民としても寂しい」と述べ、移転による経済的打撃を懸念している。
潮来市は渋滞緩和をメリットに
移転先として検討が始まった潮来市は、試合日の渋滞緩和などをメリットに挙げている。試合日には首都圏から多くのサポーターが東関東道潮来インターチェンジ(IC)を利用して訪れるが、鹿嶋市のメルカリスタジアムに向かう車は神宮橋や新神宮橋などで長い渋滞を発生させている。潮来市は、新たなクラブハウス周辺に車を止め、バスで輸送する「パークアンドライド」方式を導入し、渋滞緩和につなげる方針を示している。
サポーターの反応は様々
サポーターの間でも意見は分かれている。土浦市の男性は「クラブハウスは鹿嶋のイメージが強く、やはり本拠地がある街に来たい」と移転に否定的だ。一方、神奈川県の30代女性は「公開練習は頻繁に来ている。潮来に移ったら、県外ファンはうれしいのでは」と前向きな見方を示す。移転問題は、地域経済とファンの利便性の間で複雑な様相を呈している。



