A東京・安藤周人が語る理想のシュート「チームファーストで頂点へ」
A東京・安藤周人「チームファーストで頂点へ」理想のシュート論

シューターはチームを勝利に導く一射を追い求める。Bリーグ1部(B1)のアルバルク東京(A東京)に所属する安藤周人は、今季リーグ戦で352本の3点シュートを放ち、137本を成功させた。しかし、理想の一射が存在したかと問われると、彼は静かに首を振り、こう答えた。「優勝を果たせたなら、満足できるのではないか」。

開幕戦の大敗から這い上がったシーズン

今季のA東京は、2025年10月3日の宇都宮ブレックスとの開幕戦で56対81と大敗を喫した。安藤は当時を振り返り、「がむしゃらにやるしかなかった」と語る。チームはエースのテーブス海や大黒柱のライアン・ロシター、新戦力のブランドン・デイビスらを負傷で欠き、昨季王者のフィジカルに圧倒された。国際試合を含め開幕5連敗と苦しむ中、安藤は「こんな状況だからこそ、土台を築かなければならない」とチームに奮起を促した。

負傷者の穴は大きかったが、安藤は全員が成長することで補うべきだと主張。自身も普段とは異なるポジションをこなし、守備の強度を高める努力を続けた。その結果、B1記録の開幕10連勝を達成した千葉ジェッツを止めるなど、チームはチャンピオンシップ(CS)への道を切り開いた。

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天皇杯優勝の陰で感じた悔しさ

全員が成長した終着点の一つが、天皇杯全日本選手権の優勝だった。しかし、安藤は大会直前の負傷でコートに立てず、わずか9人で戦い抜いたチームをベンチから見守るしかなかった。アマチュア、プロを通じて日本一の経験がなかった安藤は、「天皇杯優勝はうれしかったが、同時にうれしくない気持ちもあった」と複雑な胸の内を明かす。

テーブス海がエースの責任を背負い続け、福沢晃平が前回大会のミスを取り返すために涙する姿に感動した安藤は、「みんなが頑張ったと分かっているからこそ、あの舞台に立てなかったことが悔しかった。もう一度あの景色を見るために、今度は自分がチームを助けたい」と語り、頂点への思いを新たにした。

最終節で得た教訓と長崎への対策

シーズン最終節のレバンガ北海道戦では、第1戦を111対104で勝利したものの、第2戦を96対97で落とし、安藤は「ファンには楽しいゲームだったかもしれないが、自分たちにとっては最悪の内容だった」と唇を噛む。特に第2戦ではターンオーバーが16に上り、そこから23失点を喫した。長崎ヴェルカも速い展開を得意としており、この1勝1敗の結果を安藤は「反省しなければならない」と受け止める。

一方で、昨季のCS準々決勝では千葉Jに次々とシュートを決められ、A東京らしさを発揮できないまま敗退した。今季の最終節でも北海道のドワイト・ラモスや富永啓生に爆発されたが、チームは崩れることなく踏みとどまった。安藤は「ブランドン・デイビスのように得点できる選手が多く、ついていけた」と前向きに捉える。

チーム一丸で菊地祥平を横浜へ

迎えるCS準々決勝の相手は、リーグと地区で首位の長崎ヴェルカ。平均91.2得点と速攻での得点がリーグトップで、3点シュート成功率トップのイ・ヒョンジュンも擁する強敵だ。安藤は「行けるという気持ちよりも、やばいと思っていた方がいい。一人一人が危機意識を持っている」と警戒を緩めない。

長崎にはクラブ創設時からチームを支え、今季限りで現役引退を表明したベテラン、狩俣昌也がいる。狩俣は「B3、B2から昇格したが、チャンピオンにはなれなかった。アルバルクのような伝統ある強いチームになるにはタイトルが必要。今季、獲得することが大事だ」とチームを鼓舞する。

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一方、A東京には菊地祥平がいる。のべ13年在籍し、チームファーストの精神を植え付けた41歳も現役引退を表明している。チームは菊地を横浜(決勝の開催地)に連れて行くという思いを強めており、安藤も菊地から薫陶を受けた一人だ。安藤は「一つ一つのプレーがチームにどんなプラスアルファをもたらすかを考えるようになった」と語る。

理想の一本とは

安藤が考える理想の一射とは、自身の能力と鍛錬だけで決める3点シュートではない。堅守で流れを作り、緻密な攻撃で役割を果たし、全員が正しい判断を積み重ねた末に、自分に託されたボールでリングを射抜く一射だ。それは得意の3点シュートではないかもしれない。ドライブからのレイアップ、泥臭い守備、ルーズボールへのダイブかもしれない。頂点にたどり着けるなら、理想の一射が打てなくても構わないという。

B1は今季が最後。来季からはBリーグ・プレミアとして新たな歴史が始まる。31歳のシューターは「今季を取るか取らないかで、アルバルクの歴史も変わってくる。自分のことばかりでは勝てない。チームファーストでやっていきたい」と語る。自身がコートで迎える初の日本一、そして尊敬する菊地への最高の花道を用意するために、安藤は身を粉にして戦い抜く覚悟だ。