今年の春は驚くほど短かった。もう蝉が鳴いているのだろうか。いや、そんなはずはない。天気予報ではまだヒノキの花粉情報が伝えられている。実は、蝉は私の左耳の中で鳴いていた。耳鳴りだった。
耳鳴りとの闘い
最初はすぐにおさまるだろうと楽観視していた。しかし、その期待は見事に裏切られ、翌日も蝉は元気に鳴き続けた。疲れを知らないのか、四六時中、シャーシャー、ジージーと張り切っている。特に夜の鳴き声がひどく、数日後にはとうとう気になりすぎて眠れないまま朝を迎えることになった。
病院へ駆け込む
寝不足でヨロヨロしながら、朝一番に耳鼻科を受診した。「1週間前から左耳で蝉が鳴いているみたいなんです!」と必死に訴える私に、先生は苦笑い。診察の結果、耳の中には異常がなく、聴力も少し下がっている程度だった。「うーん…」と先生もしばらく思案顔。結局、原因がはっきりしないまま、とりあえず2週間分の薬を処方され、様子を見ることになった。
蝉との共存
帰宅後、「1日も早く飛び立ってくれますように…」と願いを込めて薬を飲んだが、私の耳はどうやら居心地が良いらしい。無事に2週間後に旅立ってくれるのだろうか。もしこの先長い付き合いになるなら、いっそのこと名前でもつけようかと考え始めた。セミコよ、少しお昼寝はいかが? いや、セミコ様、お願いですから、どうかお昼寝してください。
和田真理子(55) 大阪府河内長野市



