キユーピー撤退でもベビーフード市場は拡大続く メーカーは社会的インフラと位置付け
ベビーフード市場拡大続く メーカーは社会的インフラと位置付け

ベビーフード市場の変革期 撤退と拡大が交錯する現場

子育て家庭にとって欠かせない存在であるベビーフードや幼児食の分野で、大きな動きが起きている。食品メーカーのキユーピーが2026年8月をもってこの市場から撤退する一方で、他のメーカーは需要拡大を見据えた新商品投入を加速させている。この状況に、子育て中の保護者からは不安の声が上がっている。

キユーピー撤退に寄せられる惜しむ声

世田谷区の団体職員、若林麻衣さん(45)は「息子たちが赤ちゃんのころ、本当にお世話になった」と振り返る。フルタイム勤務で多忙な日々の中、外出時や平日の食事でキユーピーのベビーフードを活用していたという。「モグモグ食べる姿が、何よりの安心だった」と語る若林さんは、同社の撤退発表に「子育て中の人を支える、手軽で安心な選択肢が失われるのでは」と懸念を示している。

キユーピーのベビーフード事業は1960年、野菜と果物の缶詰6品目からスタート。その後、瓶詰めやレトルトパウチ、カップ容器入りなど72品目にまで拡大したが、昨年6月、販売数の低迷と原材料価格の高騰を理由に撤退を決定した。同社広報担当者によれば、発表後には「残念」「困る」という惜しむ声や、「似た商品はあるか」といった問い合わせが多数寄せられているという。

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少子化の中でも需要は過去最高水準

少子化が進む日本において、他のメーカーの動向が注目される。国内最大手で「和光堂」ブランドを展開するアサヒグループ食品は、昨年夏に1歳半から2歳向けの幼児食シリーズを初めて発売するなど、市場縮小ではなく利用者層の拡大を積極的に図っている。

同社担当者の高橋岳春さん(49)は「少子化が進む一方で、共働き世帯の増加や育児スタイルの変化により、ベビーフードの需要は過去最高水準にある」と分析する。しかし同時に、「約300という多品種を少数ずつ生産し、厳格な安全管理も必要なため、利益率や効率は決して高くない」という業界の実情も明かしている。

災害時におけるベビーフードの重要性

ベビーフードの社会的価値が特に際立つのは災害時である。東京都福祉局は、避難所を運営する区市町村向けのガイドラインで「被災のショックの中で迅速に子どもに食事を与えられることで保護者が心理的に充足する」と説明し、備蓄を促している。

高橋さんは「ベビーフードは単なる商品ではなく、親の心を軽くする精神的サポートであり、社会的インフラです」と強調する。「当社としても、利益だけで測るカテゴリーではないと位置付けている」と語り、企業の社会的責任の観点からもこの市場への継続的な取り組みを示唆した。

市場の未来と社会的役割

現在のベビーフード市場は、以下のような特徴と課題を抱えている:

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  • 需要の多様化:共働き世帯の増加により、時短で栄養バランスの取れた食事を提供できる商品へのニーズが高まっている。
  • 品質と安全への要求:消費者は原材料の安全性やアレルギー対応など、より厳格な品質を求める傾向が強まっている。
  • 災害備蓄としての認識:東日本大震災などの経験から、非常時における備えとしての重要性が再評価されている。
  • 企業の持続可能性:利益率の低さと社会的必要性のバランスをどう取るかが、各メーカーにとっての課題となっている。

キユーピーの撤退は一時的な混乱をもたらす可能性があるが、アサヒグループ食品をはじめとする他のメーカーが新商品開発や市場拡大に積極的に取り組んでいることから、全体としての供給は維持されると見られる。子育て家庭にとって、ベビーフードは単なる便利品ではなく、育児の負担軽減や非常時における安心材料として、今後も重要な役割を果たし続けるだろう。