学生を狙う「副業詐欺」が急増 SNSで巧妙な手口に注意喚起
SNS上で「スマートフォンで簡単に金を稼げる」などと持ちかけられ、金銭をだまし取られる被害が後を絶たない。専門家によると、これは「副業詐欺」と呼ばれ、SNSが身近な若年層が主なターゲットとなっているケースが多いという。関係機関が警戒を強め、注意を呼びかけている。
高収入をうたう巧妙な勧誘手口
「感想を書くだけで終わる。時給1700円くらいもらえるよ」――このような甘い言葉で学生を誘い込む手口が横行している。例えば、インスタグラムを使った広告事業の勧誘を装い、現金をだまし取ったとして、府警は2026年2月、東京都の職業不詳の男性(27歳)ら3人を詐欺容疑で逮捕した。その後、詐欺罪で起訴された。
起訴状などによると、男性らは共謀して2023年7月、高収入を得られる「副業」として男子大学生を広告事業に勧誘。参加費や手数料名目で計91万円をだまし取ったとされている。府警は、このグループが2023年だけで男子大学生ら約160人から計約1億4000万円を詐取していた可能性があるとみて、詳細な調査を進めている。
役割分担を駆使した組織的な詐欺
府警の捜査から、このグループには巧妙な役割分担があったことが明らかになった。まず、「アポインター」と呼ばれるメンバーがインスタグラム上で女性を装い、複数の男性に接触。ダイレクトメッセージ(DM)で「映画やドラマの感想をSNSに投稿するだけ」とアルバイトを紹介する。
興味を示した被害者に対面での面接を持ちかけると、投稿バイトの話を差し置いて、架空の広告事業に勧誘したという。面接には、成功体験を語る勧誘役「アフター」が高級ブランドに身を包んで登場し、被害者と同じ「応募者」と称したサクラ役を同席させていた。さらに、お金をだまし取るための契約書を作成する「クローザー」と呼ばれる人物も存在していた。
被害相談が急増する背景
消費者庁などによると、こうした手法は「副業詐欺」とも呼ばれ、「SNSで動画のスクリーンショットを送る」「撮影した写真を所定のアプリ内に貼り付けるだけ」などと手軽さを強調するのが特徴だ。様々な手口があり、最初に少額の報酬を得る「成功体験」で被害者を引き込むと、一転して「違約金が生じた」などと主張し、警察への被害届や民事裁判といった法的手段をちらつかせて金銭の支払いを迫るケースも確認されている。
国民生活センターのまとめでは、こうした被害相談は2024年度に3381件寄せられ、4年前の2020年度から2.5倍に増加した。このうちSNSをきっかけとした被害は2426件と約8倍に増え、全体の7割を占めた。
若年層のSNS依存と経済的背景
被害拡大の要因について、成蹊大学の高橋暁子客員教授(情報リテラシー)は「若年層にとってSNSは身近な存在だ。タイパ(時間対効果)を求め、スマホで楽に稼ぎたいと考える学生も増えている」と指摘する。物価高で、親から十分な仕送りを得られないことも背景にあるという。高橋客員教授は「『あまりにも楽に稼げる』など、違和感を少しでも感じれば家族や消費者ホットライン(188)に相談を」と話している。
就活多忙な学生が手軽さに引かれる実例
東京都内の私立大学に通う20歳代の男性は、昨年から今年にかけて、女子大学生を名乗る人物からインスタグラムを通して「副業」に勧誘されたという。男性は不安を覚え、経緯の一端を取材で明かした。
男性は昨年10月頃、見知らぬアカウントに突然フォローされ、「知り合いでしたっけ」とDMを受け取った。女性を想起させるアルファベットの名前で、都内在住の大学生だと説明された。写真は後ろ姿で顔は見えず、通話に誘ったが「声がコンプレックス」と拒否された。
DMで2か月ほどやりとりした頃、「在宅で映画を見てレビューを投稿するだけ」と高収入のアルバイトを紹介された。当時は就職活動で忙しく、手軽さに引かれて誘いに応じたという。すると後日、「担当者」を名乗る男性とみられる人物から電話があり、面接場所に池袋を指定されたが、詳細な場所は「当日伝える」とはぐらかされた。
改めてやり取りを振り返ると、「何のバイトをしているの」などバイトに関する質問を何度も繰り返すなど不自然な点があることに気づいた。「複数人と同時並行で会話していたのかも。マニュアルに基づいた詐欺では」と考え直し、面接はキャンセルしたという。男性は「バイトを紹介するまで、こちらが心を許すのを待っていたようで、巧妙だと感じた。もしも面接を受けていたら今頃、どうなっていただろうか……」と振り返った。



