熊本地震から10年、被災経験を糧に新たな一歩
2026年4月1日、新年度がスタートしたこの日、官公庁や企業では辞令交付式や入社式が各地で開催された。特に2016年4月に発生した熊本地震からちょうど10年という節目を迎える熊本県では、新社会人たちが被災地の復興に向けて強い決意を表明し、組織改編を行った自治体では幹部職員が奮起を促す訓示を行った。
県庁での辞令交付式、知事が柔軟な発想を呼びかけ
熊本県庁で行われた辞令交付式では、木村敬知事が新規採用者245人(任期付き採用を含む)を前に、「固定概念や前例にとらわれない柔軟な発想で、失敗を恐れずにチャレンジしてほしい」と熱のこもった訓示を述べた。この式典では、新規採用者を代表して藤島大志さん(22)が辞令を受け取った。
被災経験を抱えて県職員の道へ
藤島さんは、地震で観測史上初めて最大震度7を2度観測した熊本県益城町の出身である。自宅が倒壊し、約4か月間にわたり公民館で不安を抱えながら避難生活を送った経験を持つ。地域に足を運び、復興を後押しする県職員の姿をニュースで目にしたことをきっかけに、地域の発展に貢献しようと入庁を決意したという。
「町並みは地震前の姿に戻りつつありますが、今も苦しんでいる人はいます。そうした人をケアできる職員になりたい」と、藤島さんは力強く語った。被災者の心情に寄り添い、支援を続けたいという思いがにじみ出ている。
益城町でも新たな職員が決意を新たに
一方、益城町でも辞令交付式が実施され、新規採用職員ら計16人が辞令を受けた。西村博則町長は式典で、「地震では町内の98%の家が何らかの被害を受けました。日本全国からの応援もありましたが、自身も被災しながら頑張ってくれた職員の存在が大きかった」と振り返り、「同じような災害が来た時に備えられる職員になってほしい」と新入職員に呼びかけた。
故郷に帰り、教訓を次世代へ
町外での社会人経験を経て、新規職員として採用された河端良典さん(33)は、地震発生時には大学生だった。就職活動中に偶然、同町の実家に帰省していた際に被災し、実家が半壊したため、両親らと一緒に約1か月間車中泊で過ごし、家の片付けを手伝った経験を持つ。
「いずれは故郷に帰りたい」という願いをかなえて迎えたこの春、河端さんは「町は地震前から生まれ変わりました。職員として町に貢献し、地震を経験していない子どもたちにも教訓を伝えていきたい」と語った。被災の記憶を風化させず、未来の防災に活かす決意が感じられる。
熊本地震から10年が経過し、復興が進む中で、新たな世代が被災経験を糧に公務員としての道を歩み始めた。彼らの活躍が、地域のさらなる発展と災害に強い社会の構築に寄与することが期待されている。



