テニスボールで教室の騒音を軽減 蕨市の小学校で広がる配慮
埼玉県蕨市の小学校で、机や椅子の脚に中古のテニスボールを取り付ける取り組みが広がっている。補聴器を使用する児童への配慮から始まったこの活動は、現在では市内の全7小学校で導入が進み、教育環境の向上に貢献している。
児童たちが自ら取り付け作業
3月19日の昼前、蕨市立北小学校の教室では、5年生の児童約100人が机と椅子をひっくり返し、脚の先端に切れ込みを入れたテニスボールを一つ一つ取り付けていた。使用されているのは、地元のテニススクールなどで使われた中古ボールで、反発力が弱まり廃棄される予定のものを再利用している。
無事に取り付けを終えた安斉結希音さん(11)は「動かしやすくなった」と笑顔を見せた。この取り組みにより、机や椅子を動かす際の摩擦音が大幅に軽減され、教室全体が静かになっているという。
補聴器を使用する児童への配慮から始まる
この取り組みが市内で広まり始めたのは2019年ごろ。発起人は市立中央小学校の元PTA会長、加藤直明さん(49)だ。中央小学校では20年前から独自にこの活動を開始していた。
きっかけは、補聴器を付けた新入生だった。机や椅子を引きずった際に生じる「ガガガッ」という音が補聴器に拾われ、先生の声が聞こえづらくなる問題があった。この対策として、テニスボールを脚に取り付ける方法が考案された。
「教室内の騒音を減らすことは、聴覚障害のある子どもだけでなく、すべての子どもにとって質の良い教育環境につながるはず」加藤さんはこう考え、普及活動を開始。他校のPTAや市テニス協会に取り組みを紹介し、協力を呼びかけた。
地域全体の協力で広がる取り組み
スポーツクラブルネサンス蕨24をはじめとする地元のテニススクールから、市テニス協会を通じて各校のPTAに中古ボールが提供されるようになった。さらに、中央小学校の保護者たちが開発した「てこの原理」を利用した器材は、地元の清掃会社が格安で量産してくれた。
こうした地域全体の協力体制のもと、7年間で市内の全児童のほぼ半数にあたる机と椅子に取り付けが完了。使用されたボールの総数は1万個を超えるという。
加藤さんは「これだけまとまって取り組むのは珍しいのでは」と語り、「蕨の伝統としてリレーしてもらえたら」と願っている。この小さな配慮が、子どもたちの学びやすい環境づくりに大きく貢献している。



